冨田 祐貴

個人事業主として経営管理ビザを取得する方法は?入管申請の専門家が解説!

人事業主として経営管理ビザを取得する方法は?入管申請の専門家が解説!

経営管理ビザを取得する際には,多くの方が会社を設立します。

会社を作るには資本金を用意し,必要書類を揃えて,法務局に法人設立登記の申請をしなければなりません。司法書士への依頼費用や,登記の際に登録免許税(株式会社の設立の場合は15万円以上)がかかります。会社を作るだけでもお金がかかるため,経営管理ビザを取得することを希望される外国人の方の中には,会社を作らずに個人事業主として経営管理ビザの取得を希望される方もいらっしゃいます。

入管法では,個人事業主としての経営活動を禁止していることはなく,会社を作らずとも経営管理ビザを取得することができます。

そこで,本ページでは個人事業主として経営管理ビザを取得する方法をご紹介します。

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1.個人事業主の経営管理ビザ取得要件

経営管理ビザには,在留資格該当性としての事業活動,その事業の適正性,安定性および継続性,上陸基準省令適合性としての事業所の存在および事業規模の基準が定められています。

法人事業形態と個人事業形態で異なるのは,実は事業規模の基準だけです。上陸基準省令の在留資格「経営・管理」の項には,以下のように事業規模の基準が定められています。

二 申請に係る事業の規模が次のいずれかに該当していること。
イ その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する二人以上の常勤の職員(法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者を除く。)が従事して営まれるものであること。
ロ 資本金の額又は出資の総額が五百万円以上であること。
ハ イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること。

上記のイからロまでのいずれかを満たしていればいいのですが,法人事業形態の場合は,ロの「資本金の額又は出資の総額が500万円以上であること」を証明するのが一般的です。資本金を500万円以上に設定して会社設立の登記をすれば足りるので,その証明は難しくありません。

一方で,個人事業形態で経営管理ビザを申請する場合は,個人事業には資本金の概念がないため,イ(常勤職員2名以上)またはハ(イ又はロに準ずる規模)で事業規模の基準を証明することになります。

2.個人事業主の場合の事業規模の証明方法

(1)常勤職員2名以上の意味とは?

経営管理に従事する外国人以外に,日本に居住する常勤職員が2名以上勤務する事業であることを要件とします。

ここでいう常勤職員は日本人・外国人のいずれでも構いませんが,外国人職員の場合は,特別永住者の他,「永住者」,「永住者の配偶者等」,「日本人の配偶者等」,「定住者」の在留資格をもった方が対象になります。常勤従業員との雇用契約の事実を証明(雇用契約書の提出)することによって,事業規模の基準を証明することになります。

新規事業の場合には,開業当初から2名以上の常勤職員を雇用することは,事業経営上なかなかハードルが高いため,この基準を使って経営管理ビザを申請するケースは実務上,あまり多くはありません。

(2)準ずる規模の意味とは?

個人事業形態での経営管理ビザを取得しようとする場合は,上記の資本金500万円以上または常勤職員2名以上に準ずる規模であることをもって,事業規模の基準を証明することになります。

準ずる規模とは,500万円以上を投資して事業が営まれるような規模を指します。この場合の500万円以上の投資とは,事業を営むために必要な人的・物的設備に投下された資金の総額を言います。

具体的には,以下のような資金が含まれます。
①事業所を確保するための資金…敷金・礼金等の初期費用,改装費,機器の購入費等
②事業所を維持するための資金…1年分の賃料,管理費等
③職員の給与…1年分の給与・賞与等(非常勤職員の給与も含みます)

これらの費用を積み上げて,事業に投下する資金が500万円以上であることを示すことになります。事業所の賃貸借契約書や職員の雇用契約書を提出する他,什器,パソコン,プリンター,細かいものではボールペンを購入した際のレシートなどを提出することもあります。

注意しなければならないのは,仕入れにあたる費用については投下資金には含まれないことです。例えば,貿易事業を経営する場合に,商品の購入費用は投下資金には含まれません。なぜなら,仕入れ費用は流動性が高く,事業規模を図る物差しにはならないからです。

3.個人事業主として経営管理ビザを取得する方法のまとめ

本ページでは,個人事業形態による経営管理ビザの取得について解説しました。

法人事業形態の場合と比較すると,個人事業主の場合には事業規模の基準を証明するのは容易ではありませんが,もちろん不可能ではありません。法人事業形態にも様々なメリットはありますが,初期コストの面では個人事業形態での事業の方がメリットは大きいでしょう。

その他,経営管理ビザの要件は,
経営管理ビザの要件① ~在留資格該当性~
経営管理ビザの要件② ~上陸基準省令~  をご覧ください。

これから事業を立ち上げようとお考えの方は,事業の内容も大切ですが,事業の形態も意識してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 冨田 祐貴

・日本行政書士会連合会(登録番号第19261319号)
・東京都行政書士会(会員番号第14030号)
兵庫県出身。東京オフィス長として,企業向けのセミナーにも登壇。外国人ビザ申請,国際結婚,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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