コラム

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【解決事例】永住許可申請と年収の関係について

1.はじめに 2019年7月1日から,永住許可申請の提出資料として,申請人又は申請人を扶養する方の所得状況を証明する資料として直近5年分の所得証明書の提出が必要となりました。これまでは3年分でよかったものが,5年分になったため,より長期に亘る家計の状況を明らかにする資料を提出することになり,生計の安定性については,これまでより厳しい判断が行われるようになっています。 「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザをお持ちの方は,永住許可申請のハードルが上がっていることや,提出資料が増加していることから,これまで以上に早めに永住許可申請を希望される方が少なくありません。 また,審査が厳しくなったこともあり,これまで許可されていたケースにもかかわらず,永住ビザの申請が不許可になってしまうケースが増加しています。 私共にご相談が寄せられる中で,永住をお考えの方の一番の関心事は,①永住許可の可能性,②永住許可が見込まれる時期,という二つの事項に集約されます。 その中でも,永住許可申請と年収の関係については,特にご質問が多い事項です。ご自身の年収状況によって,永住許可の可能性が下がってしまうことや,また申請を見送るような事例が多く見受けられます。 そこで,今回は永住許可申請と年収の関係について,詳しく解説していきます。 2.永住許可申請をする場合 永住ビザが許可されるためには,どのような要件が定められているでしょうか。入管法には,以下のとおり定めがあります。 (第22条第2項 永住許可) 前項の申請があった場合には,法務大臣は,その者が次の各号に適合し,かつ,その者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り,これを許可することができる。ただし,その者が日本人,永住許可を受けている者又は特別永住者の配偶者又は子である場合においては,次の各号に適合することを要しない。 一 素行が善良であること。 二 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。 今回は永住許可申請と年収の関係をピックアップしていますので,他の要件は割愛しますが,年収要件については,「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」とあるのみで,具体的に年収はいくら必要であるとか,貯蓄がいくら以上必要かなどについての具体的な言及は入管法にはありません。 永住許可申請にいう「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」とは,日常生活において公共の負担にならず,その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれることを指します。 この抽象的な規定が,これから永住許可申請をされる方々の悩みになるのは,想像に難くありません。 3.年収について 本項では,永住許可申請の際に必要となる年収をケースに分けて解説していきます。 (1)就労ビザで単身世帯の場合 申請人の方が就労ビザの保有者で,単身世帯である場合には,年収300万円以上が永住審査における一つの指標になっています。もっとも,年収が300万円を超えている場合であっても,ご家族の構成,扶養家族,勤続年数などによっては,必ずしも永住許可が保証されているわけではありません。この点,注意が必要です。 例えば,就労ビザの単身世帯で年収300万円であったとしても,世帯外の扶養家族が4名いる場合には,年収として300万円では不十分として判断される可能性が高いでしょう。また,転職したばかりのケースにあっては,年収300万円以上であっても,就労状況の安定性が低いと評価され,永住ビザの不許可要素となり得ます。 このように様々なケース,考慮すべき事項があるため,一概にいくらの年収があれば大丈夫と断言するのは難しいのですが,就労ビザで単身世帯の場合には,年収300万円を指標に検討するのが一般的です。 (2)就労ビザ+家族滞在ビザの場合 事例のように,ご主人様が就労ビザ,奥様が家族滞在ビザでアルバイトをしているケースについて検討します。例えば,ご主人様の年収が240万円,奥様のアルバイトでの年収が60万円の場合,ご主人様が永住申請をするにあたって,ご主人様の年収と奥様のアルバイト年収を合計して,世帯年収300万円以上と判断してくれるのでしょうか。 この点については,入管局によって,また個別の申請内容によって,判断が分かれるところではありますが,原則的な考えとしては,家族滞在ビザの収入は含めないと判断するのが一般的です。その理由としては,そもそも家族滞在ビザは就労ビザではなく,原則として就労が出来ないビザであると考えられているからです。また,アルバイト収入は安定所得とは言い難いという点もあります。そのため,家族滞在ビザの奥様のアルバイト収入は含めず,ご自身の年収のみで判断してみて下さい。 (3)就労ビザ+就労ビザの場合 夫婦が共に就労ビザ,いわゆる共働き世帯のケースを見ていきましょう。例として,ご主人様の年収が260万,奥様の年収が260万の場合には,永住許可申請の審査においては,世帯の年収で判断してもらえる可能性があります。 なぜなら,上記(2)とは異なりいずれも就労ビザであるため,夫婦で今後も安定した継続収入が見込まれると考えられているからです。そのため,共に就労状況が安定している場合には,永住審査における年収要件はクリアしていると判断して差し支えありません。 注意すべき事項としては,一方配偶者の年収があまりにも低いような場合です。この場合には,就労状況が不安定と判断される可能性があり,世帯の合計年収で見てもらえない可能性があることから,この点には注意を要します。 (4)配偶者ビザの場合 日本人の配偶者等,永住者の配偶者等,定住者のビザは,身分系のビザと言われ,その身分や地位に基づきビザが与えられています。言い換えると,日本との結びつきが強いビザということが出来ます。そのため,上記で見た就労ビザと比較すると,永住許可申請の年収判断においても,有利に解釈がなされています。 具体的にいうと,配偶者が日本人の場合には年収300万円なくとも,実際に永住ビザが許可されています。また,上記(2)は世帯の合計年収では判断されなかったのに対し,配偶者ビザの場合には,パート年収も含めて世帯の合計年収で判断してもらうことが出来ます。 このように,身分系のビザをお持ちの方については,年収要件が就労ビザの場合よりも緩和されているのが大きな特徴です。 (5)まとめ いかがでしたでしょうか。同じ永住許可申請をする場合であっても,お持ちのビザの種類によって判断は異なりますし,また扶養家族の人数,配偶者のビザの種類によっても結論は異なります。 ご相談の中には,海外での所得や貯金額などで独立生計要件を満たしていると考える方もおられますが,その一事をもって永住許可を得るのは難しいです。 なぜなら,永住の年収要件は,あくまでも日本に生活基盤を持つことを前提として,審査されているからです。…

【解决事例】永住签证要件~高度专门职(相当于)的情况

1.申请永住签证时原则上的要求 对于永住的申请,“法务大臣规定,申请者需满足以下各项条件,并且申请者的永住符合日本国利益,方可申请永住签证”。(入管法第22条第二项本文)有对此做出规定,同条第2项各号中还规定,必须品行良好且具有能够独立的生计的资产或者技能。 像这样,为了取得永住签证,需要满足以下条件,①符合国家利益要求(入管法第22条第2项本文),②品行良好(入管法第22条第2项1号),③生计独立要求(入管法第22条第2项2号)。 不管是任何一项要求,他的文字表现对于判断是否符合要求都有一定难度。特别是①的符合国家利益,什么样的情况下是符合日本国家利益,仅仅只是文字措辞很难进行审查,因此,对此解释的线索则是关于永住许可的申请指南。 关于永住许可的申请指南,永住许可申请若想要满足符合国家利益这个要求的话,则需要满足以下条件。 1 原则上需要持续在日本居住满10年以上,同时,要求在此期间,就劳资格(在留资格为“技能实习”以及“特定技能1号”除外),或者持续持有居住资格满5年以上。 2 没有受到罚款或者监禁。正确的履行公共义务(纳税,公共年金以及公共医疗保险的保险费的支付,出入国管理局以及难民认定法所规定的通知书提交义务等)。 3 关于现有资格,必须持有出入国管理局以及难民认定法实行规则别表第2中规定的最长的在留资格。 4 从公共卫生角度来开没有有害威胁。 像这样,作为符合国家利益要求之一,如1所述,要求在留满10年以上,其中5年以上持有就劳资格或者居住资格。 2.条件相当于高度专门职签证时的永住申请条件 在申请永住签证的时候,原则上要求需要持续在日本满10年以上,但是,这之中也有几个例外。其中之一就是条件相当于高度专门职申请永住签证时的情况。 该准则规定以下内容。 (1)~(5)略 (6)出入国管理以及难民认定法别表第1的2的表的高度专门项目中规定的基本省令(以下简称“高度专门职省令”。)通过计算规定的分数表,其中分数满70分以上的人,并且满足以下所有要求。 1 以“高度人才外国人”身份在日本持续居住满3年以上。 2 在日本持续居住满3年以上的人,在递交永住许可申请时的3年前为基准,高度专门职省令规定的分数计算表中分数满70分以上。 (7)高度专门职省令所规定的分数计算表计算的分数满80分以上的人,并且满足以下所有条件 1 以“高度人才外国人”身份在日本持续居住满1年以上 2 在日本持续居住满1年以上的人,在递交永住许可申请时的1年前为基准,高度专门 职省令规定的分数计算表中分数满80分以上。 入管法规定,“高度专门职”的在留资格也是工作签证的一种。它的设立是为了招聘IT领域等优秀的外国人来日本,为了增强日本的国际竞争力,邀请具有高度专业技术和知识的外国人(高度专业化的外国人)。为了让这些优秀的外国人才更容易的在日本工作,让他们更容易取得日本永住签证而缩短了在日年数的要求。 接下来,我们来看一下具体内容。 高度专门职的在留资格,同其他的在留资格有很大的不同,根据学历,工作经历,持有资格,年收等来分配积分,如果总积分达到70分或者更高,则可以授予该签证。 总积分满70分以上,持有高度专门职的在留资格的话,申请永住时的必要在日年数缩短为3年。 如果总分满80分以上,持有高度专门职的在留资格,申请永住时的必要在日年数缩短为1年。 在这里要注意的是,申请指南的(6)-2以及(7)-2这一部分。 就算没有高度专门职的在留资格,在申请永住的时候,总分达到70分以上,或者申请日期开始3年前的分数满70分以上,可以享受必要的在留年数缩短为3年的这个优惠政策。 同样的,申请时的分数满80分以上,并且申请日期开始一年前的分数的总分为80分以上,就算不持有高度专门职的在留资格,永住申请时的必要的在留年数也可以缩短为1年。 也就是说,无论是否持有高度专门职的在留资格,只要分数满70分或者80分以上,永住申请时的必要的在留年数都可以缩短为3年或者1年。 通过这种方式,持有高度专门职在留资格的外国人,或者情况等同于高度专门职在留资格的高度人才外国人,在留年数满1年或者3年的时候,都可以试着申请永住签证。 3.事例的探讨…

【解決事例】关于永住签证和转职的关系

1.首先 在永住签证的咨询当中,有被问到,如果曾经有过转职经历,是否会对永住签证的审查带来不利的影响。 有过转职经历(或者说转职次数多的人)在申请永住签证时, ①转职的时期或者次数 ②与转职相关的手续的执行状况 ③转职后的业务内容与就劳签证的关系。 ④离职的期间 ⑤由于转职而造成的年收的状况等,需要探讨各种各样的内容。 因此,这一页我们来对转职对永住签证审查所带来的影响进行说明。 2.转职次数多的话无法取得永住签证? 首先从结论来说,就算有转职经历,也有很多人获得永住签证。 因此,并不是说转职了,就不能获得永住签证。 那么,为什么很多人会觉得转职会给永住签证申请带来不利的影响呢? 理由是,同那些没有转职经历的人比起来,有转职经历的人,需要考虑的手续或者探讨事项的因素增加了。 比如,上面②的是否有执行与转职相关的手续这一点,有必要探讨是否正确的向所属机关等提交相关的通知(入管法第19条的16)。 此外,关于保险费的支付情况,离职后,之前一直加入厚生年金的人需要转换到国民年金,健康保险也要转换到国民健康保险。然后,再就职时,新公司需要办理年金和健康保险的转换手续,假设,这些手续出现漏洞,那么,在永住签证的审查上会有很大的减分。 像这样,转职时所伴随的手续,需要密切注意且不能犯错,反之,这些手续没有任何漏洞,那么就算有跳槽经历也不会对永住的审查带来不利的影响。 因此,不能说「转职=永住签证×」,而是要理解为「转职手续出现漏洞=永住签证×」。 3.为了取得永住签证,转职时需要特别注意的地方 对于以申请永签证为目标的各位,以下所记载的内容是转职时特别需要注意的事项。 ・转职时请不要忘记这些手续! 转职时需要在入管办理的手续,需要履行社会保险手续等。关于这一点,要向转职时的公司,转职公司的顾问行政书士或者顾问社劳士进行确认。确保手续没有遗漏,若有遗漏的话则会在永住签证审查上带来负面影响。 ・转职后请不要立即申请永住签证 入管在永住签证审查上,需要确认大家就业情况的安定性。这意味着什么,在永住签证审查当中,需要审查取得永住签证后是否可以在日本进行安定的生活。也就是说,转职之后立即申请永住的话,大可能会被判断为就劳状况欠缺一定的安定性。因此,转职以后要做的不是立即申请永住签证,更建议等到可以确认工作进入稳定期后再申请永住签证。 ・离职期间较长的话要注意!! 为了进行转职活动,有一定转职空白期的人请确认自己的履历书。离职期间较长的话,不管是否持有就劳签证,都被认为并没有履行入管法所规定的活动内容,在永住签证的审查上,可能会被大量减分。尤其是要注意的是,超过入管法第22条的4(在留资格的取消)所规定的期间。 ・要注意转职后的工作内容要注意 转职后的工作内容和之前的工作内容有所不同,并且没有提交就劳资格证明书交付申请的话,需要注意。参照入管法,如果工作内容没有问题的话则是最好的,如果就劳签证的工作内容在入管法上,有一点不符的话,则要当心了。关于转职后的工作内容,如果有担心的地方,请咨询专家。 ・由于转职导致年收变低的话需要注意 由于转职活动,而造成能工作的空白期,导致年收减少的话,或者转职后年收减少的话,则在永住签证申请上有可能会被消极判断。通常来说,转职,是为了职业生涯的发展,年收的减少对于永住签证的审查来说是不利的。因此,如果年收大幅度减少的话,则建议另外添加说明,证明转职是为了职业生涯的发展。 4.事例的探讨 那么,接下来来探讨这回的事例。 A先生的情况,变更为就劳签证即将5年,这之间转职过几次。 在这里,本事务所探讨了永住签证许可的可能性。 最终结果是,离职期间相对较长,现在的工作也是转职后仅3个月,在就劳状况的安定性上存在一定的问题。因此,我们事务所行政书士建议,永住签证的申请时期可以等到确认就劳情况具有一定安定性以后再申请。 此外,关于其中一年的收入,再就职的工作单位手续上存在一定的漏洞,因此办理了订正申告, 也交纳了国税,地方税等。 其他方面,转职所伴随产生的需要向相关契约机关递交通知书,关于社会保险费等,自己有妥当办理手续,其他条件,则并没有存在什么特别问题。 A先生的永住申请时期被明确以后,看起来安心了许多。 之后,在所计划的时期,申请了永住签证,也顺利了获得了永住签证,…

【解決事例】永住ビザと転職との関係について

1.はじめに 永住ビザのお問い合わせをいただく中で,転職歴がある場合には永住ビザの審査上で不利になりますか?というご質問をいただくことがあります。 転職歴のある方(あるいは転職が多い方)が永住ビザの申請を行う場合には, ①転職の時期や回数 ②転職に伴う手続きの履行状況 ③転職後の業務内容と就労ビザとの関係 ④離職期間の長さ ⑤転職による年収の状況等, 様々な内容を検討する必要があります。 そこで,本ページでは転職が永住ビザの審査に与える影響を見ていきたいと思います。 2.転職が多いと永住ビザは取得できない!? 結論から申し上げると,転職をしても永住ビザを取得されている方はたくさんいます。 そのため,転職すると永住ビザが取得できないという訳ではありません。 では,なぜ転職が永住ビザの審査で不利になると思っている方が多いのでしょうか。 その理由として,転職経験がない方に比べて,転職経験がある方の場合,手続きや検討事項が増えることが要因と考えられます。 例えば,上記②転職に伴って行うべき手続きを履行しているかという点について,所属機関等に関する届出(入管法第19条の16)を適正に行っているかを検討する必要があります。 また,社会保険料の納付状況についても,離職をされると,それまで厚生年金に加入されていた方は国民年金に,健康保険は国民健康保険への切り替えが必要になります。そして,再就職した場合には,新しいお勤め先で年金と健康保険の切り替え手続きをすることになります。仮に,これらの手続きに漏れがあると,永住ビザの審査で大きな減点となってしまいます。 このように,転職に伴う手続きでエラーしないように細心の注意を払う必要がありますが,逆を言えば,これらの手続きにエラーがないのであれば,転職をしても永住ビザの審査で不利になることはありません。 そのため,「転職=永住ビザ×」 となるのではなく,「転職手続きエラー=永住ビザ×」とご理解ください。 3.永住ビザを取得するために転職で特に注意すること 以下に記載する内容は,永住ビザの取得を目指す皆さんが,転職時に特にご注意いただきたい事項です。 ・転職の際の手続き忘れには注意! 転職をすると入管への手続き,社会保険の手続き等を履行する必要があります。この点については,離職する会社,転職する会社の顧問行政書士や顧問社労士に確認を取り,手続漏れが無いようにしてください。手続漏れは永住ビザの審査でネガティブに判断されます。 ・転職してからすぐに永住ビザ申請しない! 入管の永住ビザの審査においては,皆さんの就労状況の安定性を確認します。どういう事かというと,永住ビザの審査では永住ビザを取得した後も日本で安定的に生活ができるか否かという点を審査しています。つまり,転職してすぐに永住ビザを申請した場合には,就労状況の安定性を欠いていると判断されてしまう可能性があります。そのため,転職してすぐに永住ビザ申請をするのではなく,就労状況の安定性が確認できる期間を待って永住ビザの申請をすることをお勧めします。 ・離職期間が長い場合には注意! 転職活動を行うため,離職期間がある方はご自身の履歴書を確認してみて下さい。離職期間があまりに長い場合,就労ビザを持っているにも関わらず,入管法で定める活動をしていなかったという事で,永住ビザの審査上,大きな減点になる可能性があります。特に,入管法第22条の4(在留資格の取消し)で定める期間を超過している場合には,注意を要します。 ・転職後の業務内容には注意! 転職の業務内容が前職と異なる場合で,就労資格証明書交付申請を行っていない場合には,注意が必要です。入管法に照らして明らかに業務内容が問題ない場合は良いのですが,就労ビザ活動内容が入管法上,微妙なケースでは注意が必要です。転職後の業務内容に心配がある場合には,専門家に相談するようにしましょう。 ・転職による年収の低下には注意! 転職活動によって働いてない期間があり年収が減少している場合,あるいは転職によって年収が減少してしまった場合には,永住ビザの審査で消極的に判断されてしまう可能性があります。通常,転職はキャリアアップと考えられているところ,年収が減少するのは永住ビザの審査上よくありません。そのため,年収の減少幅が大きい場合には,別途説明を加え,ご自身のキャリアデザイン等を示すことをお勧めします。 4.事例の検討 それでは,ここからは今回の事例の検討をしていきましょう。 Aさんの場合には,就労ビザへ変更してから間もなく5年が経過しますが,その間に何度か転職をしています。 そこで,当社において永住ビザの許可の可能性を検証していきました。 その結果,離職期間が相当期間あり,現職に転職してから3ヶ月ほどしか経っていなかったため,就労状況の安定性に問題がありました。そのため,永住ビザの申請時期を就労状況の安定性が確認できる時期に変更するよう,当社行政書士から提案しました。 また,ある年の所得について,再就職先の会社の手続きの漏れがあったため,修正申告を行い,国税・地方税等の納付を行いました。 その他,転職に伴い発生する契約機関に関する届出,社会保険料については,自身で適切な手続をとっていたため,その他の要件については,特段問題を生じることはありませんでした。 Aさんは永住ビザの申請時期が明確になり,とても安心された様子でした。…

【解決事例】ベトナム人の妻を家族滞在ビザで呼ぶ方法

1.家族滞在ビザとは? 家族滞在ビザとは,「就労可能な在留資格(外交,公用,特定技能1号,技能実習を除く)」,「文化活動」又は「留学(日本語学校など一部の教育機関を除く)」の在留資格をもって日本に在留する外国人の扶養家族を受け入れるために設けられたものです。例えば,就労ビザを取得し,日本の会社で働いている夫が妻および子を扶養している場合に,妻と子が家族滞在ビザを取得することによって,日本で一緒に暮らすことができるようになります。 上記の通り,「扶養」する家族を受け入れることが趣旨であることから,扶養者側の在留資格は就労可能なもの(具体的には「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「介護」「興行」「技能」「特定技能2号」「文化活動」「留学(基準省令第1号又はロに該当するもの。))に限定されます。また,扶養を受ける者は,資格外活動許可を得ない限り,就労活動を行うことはできないのが特徴です。 そして,「配偶者」は現に婚姻が法律上有効に存続中の方に限られ,離婚した方や内縁の配偶者,外国で有効に成立した同性婚による者は含まれません。「子」には嫡出子の他,養子および認知された非嫡出子が含まれます。成年に達していたとしても,学生の身分であるなど,親の扶養を受けている方は含まれます。なお,配偶者および子以外の家族は,「家族滞在」の在留資格に該当しません。 2.家族滞在ビザの要件 ① 扶養者の在留資格が,「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「介護」「興行」「技能」「特定技能2号」「文化活動」「留学(基準省令第1号又はロに該当するもの。)のいずれかに該当すること ② 扶養者が扶養の意思と扶養能力を有すること ③ 扶養を受ける側の配偶者または子が現に扶養を受け又は監護養育を受けていると認められること 以上が家族滞在ビザの要件です。 それでは,今回のAさんのケースで,具体的に見ていきましょう。 3.ベトナム人の妻を家族滞在ビザで呼ぶまでの道のり Aさんは,就職したばかりで所得課税証明書も納税証明書も入管に提出することが出来ないという事情があることから,上記2の要件のうち,特に②の扶養能力が問題となります。さらに,Aさんは留学時代にオーバーワークをしてしまっているという問題があります。そこで,まずはその事実が今回の申請にあたり,ベトナム人の妻を家族滞在ビザで呼ぶ際に,どのような影響をもたらすのかについて検討していきましょう。 (1)過去の法律違反が今回の申請に与える影響について ① オーバーワークについて 前提として,留学の在留資格は就労不能の在留資格であり,オーバーワーク(アルバイト時間の制限を超えた場合)は明白な資格外活動許可違反(入管法違反)となります。留学ビザを更新する際や,就労ビザへ変更を申請する場合に,その法令違反を理由に,ビザの更新や変更が不許可になってしまうこともあります。 その結果,留学生活を志半ばで断念せざるを得なくなったり,就職の場合には,企業から内定取り消しになる場合もあることは肝に銘じておいてください。 ② オーバーワークが家族滞在ビザ申請に与える影響について では,Aさんのオーバーワークの事実を前提として,ベトナム人の妻を家族滞在ビザで呼ぶ際に,どのような点に気を付けなければいけないか検討してみましょう。 法律違反の前歴は消えることはないので,オーバーワークに至った経緯を説明すると共に,二度とそのような事態を生じさせないことを明らかにする必要があります。どうして労働時間を超えてしまったのか,今後の再発を防ぐためにどのような対策を練るのかをしっかりと書面で具体的に示すことが重要になります。 (2)家族滞在ビザ取得時の要件「扶養能力」について では次に,Aさんの「扶養能力」の問題について検討していきましょう。 扶養能力については,扶養者の経費支弁能力と認める資産等は扶養能力と認めることとされています。例えば,扶養者が資格外活動許可の範囲内で行った就労活動(いわゆるアルバイト)による預貯金は扶養能力として認められます。また,奨学金も扶養能力として認められる可能性があります。そのため,給付金額および給付期間を明示した奨学金給付に関する証明書があれば,それらも有力な立証資料となります。 では,オーバーワークにより得た金銭で扶養能力を証明することは出来るのでしょうか? そもそもオーバーワークは法律違反であり,厳格な罰則規定が設けられています。法律違反によって得られた収入をもって資金の証明が出来てしまうとしたら,法の趣旨を形骸化してしまう恐れがあると考えられます。 よって,いくら資金の証明ができても,扶養能力としての資産には含まれないと考えられます。 そのため,Aさんがオーバーワークで得た収入は資産に含めることはできません。Aさんの場合には,許可の範囲内で適法に行った就労活動で得た収入,および他の有する資産をもって,扶養能力を証明する必要があります。また,奨学金を受けていた事実があれば,その証明書も立証資料となります。 Aさんの場合,入管法違反という重大なマイナス要素があるため,奥様の家族滞在ビザの許可を取得することは容易ではありません。しかし,過去の在留状況が不良だからといって,今回の申請もまた疑わしいと断定することは妥当性を欠きます。このことは過去の判例でも指摘されています(東京地裁平21.10.16判決「在留資格認定証明書不交付処分取消請求事件」)。 Aさんの場合も,上記の証明を丁寧に行うことで,無事ベトナム人の奥様の家族滞在ビザの許可を取得することができました。 4.ベトナム人の妻を家族滞在ビザで呼ぶ方法のまとめ 今回の事例では,①扶養者の過去の法律違反が今回の在留申請に与える影響,②家族滞在ビザ取得の要件である扶養能力に法律違反によって取得した資産が含まれるか,の2点が問題となりました。 当社に相談が寄せられるものには,このような解決が難しそうな複合的事案が数多くあります。しかし,一見困難に見える問題も,ひとつひとつを丁寧に読み解くことで,これまでも多くの案件について解決に導いてきました。 今回の案件も,他の事務所では家族滞在ビザの許可は難しいと判断された案件です。 ご自身では解決の糸口が見えず,悩まれている方は是非当社までご相談ください。…