渡邉 直斗

仮放免許可申請とは?

本ページは,仮放免許可申請に関する解説ページです。

1.仮放免とは?

仮放免とは,収容令書又は退去強制令書によって収容されている外国人について,請求又は職権によって一時的に収容を停止し,身柄の拘束を仮に解く措置のことをいいます。 刑事事件における「保釈」をイメージして下さい。

入管法第54条には,以下のとおり定められています。

(1)収容令書若しくは退去強制令書の発付を受けて収容されている者又はその者の代理人,保佐人,配偶者,直系の親族若しくは兄弟姉妹は,法務省令で定める手続により,入国者収容所長又は主任審査官に対し,その者の仮放免を請求することができる。
(2)入国者収容所長又は主任審査官は,前項の請求により又は職権で,法務省令で定めるところにより,収容令書又は退去強制令書の発付を受けて収容されている者の情状及び仮放免の請求の理由となる証拠並びにその者の性格,資産等を考慮して,三百万円を超えない範囲内で法務省令で定める額の保証金を納付させ,かつ,住居及び行動範囲の制限,呼出しに対する出頭の義務その他必要と認める条件を付して,その者を仮放免することができる。
(3)入国者収容所長又は主任審査官は,適当と認めるときは,収容令書又は退去強制令書の発付を受けて収容されている者以外の者の差し出した保証書をもつて保証金に代えることを許すことができる。保証書には,保証金額及びいつでもその保証金を納付する旨を記載しなければならない。

下記,順にみていきましょう。

2.仮放免許可申請を出来る人は?

仮放免許可申請を出来るのは,下記の方々です。

①収容されている外国人本人
②収容されている外国人の代理人
③収容されている外国人の保佐人
④収容されている外国人の配偶者
⑤収容されている外国人の親や子などの直系親族
⑥収容されている外国人の兄弟姉妹

3.仮放免許可申請の必要書類

仮放免許可申請を行う局面は,収容令書によって収容されている場合の他,退去強制令書によって収容されている場合があります。
前者は,収令仮放免や退令前仮放免と呼ばれ,後者は退令仮放免と呼ばれます。

それぞれの局面により,仮放免許可申請に添付する書類は異なります。
そのため,本ページでは一般的な必要書類を記載しています。

①仮放免許可申請書(別記第六十六号様式(第四十九条関係))
②仮放免許可理由書
③身元保証書
④誓約書(身元保証人用)
⑤誓約書(被収容者用)
⑥身元保証人の住民票(本籍地記載,マイナンバーの記載がないもの)
⑦身元保証人の収入関係証明(EX:在職証明書,課税証明書など)
⑧委任状(代理人が申請をする場合)

その他に提出する書面としては,
・収容場では治療困難な病気を患っていることを示す資料
・ご家族の状況によって収容困難であることを示す資料
などが考えられます。

また,退令前仮放免の場合には,
・在留特別許可が認められる可能性が高いことを示す資料
退令仮放免の場合には,
・長期収容により心身が疲弊していることを示す資料
なども有効な提出資料の一つです。

4.仮放免の許可要件

実は入管法には,仮放免許可の要件についての定めはありません。入管のホームページにも,
個別の事案ごとに諸般の事情を総合的に勘案して判断されるとの記載があるのみです。

もっとも,仮放免の許否判断については,入管法第54条第2項及び仮放免取扱要領第9条の下記事項を考慮のうえ,決定するとしています。

・被収容者の容疑事実又は退去強制事由
・仮放免請求の理由及びその証拠
・被収容者の性格,年齢,資産,素行及び健康状態
・被収容者の家族状況
・被収容者の収容期間及び収容中の行状
・出入国在留管理関係の処分等に関する行政訴訟が係属しているときは,その状況
・難民認定申請中のときは,その状況
・出身国・地域の政府又は大使館・領事館等との間の送還手続に係る調整の状況
・有効な旅券を所持していないときは,その正当な理由の有無
・身元保証人となるべき者の年齢,職業,収入,資産,素行,被収容者との関係及び引受け熱意
・逃亡し,又は仮放免に付す条件に違反するおそれの有無
・日本国の利益又は公安に及ぼす影響
・人身取引等の被害の有無
・その他特別の事情

5.仮放免許可申請Q&A

Q 仮放免の許可にあたっては,300万円を超えない範囲内で法務省令で定める額の保証金を納付させるとしています。保証金が高額になることもあるのでしょうか?

A 収容されている外国人の資産状況によりますが,実務上は5万円から30万円程度になるのが多い印象です。

Q 仮放免の保証金は還付されるのでしょうか?

A 下記の理由によって,仮放免を取消された場合を除き,保証金は還付されます。
①逃走した時
②正当な理由なく呼び出しに応じない時
したがって,仮放免許可に附された条件を守っている場合には,保証金は還付されるとご理解ください。

Q 仮放免許可申請の結果を受領するまで,どのくらいの期間かかりますか?

A 法定されているわけではありませんが,実務上は2週間から1ヶ月程度で結果受領となることが多いです。なお,仮放免許可申請についての結果は,申請書に記載した申請人宛に届く事になります。

Q 仮放免期間中に就労活動を行うことは出来ますか?

A 仮放免の期間中は,就労活動を行うことは出来ません。仮に,隠れて就労活動を行っていることが発覚した場合には,仮放免に附された条件に違反したとして,仮放免の取消を受ける事があります。仮放免の条件違反になるような就労活動は,行わないようにして下さい。

Q 仮放免と在留特別許可の願出を同時に行ったケースで,先に在留特別許可の結果が出ました。仮放免許可申請はどのような扱いになりますか?

A 実務運用上,仮放免許可申請についての取り下げは不要です。

Q 取消訴訟を行えば,仮放免は許可されますか?

A 過去の裁判例では,「取消訴訟等が係属中である者は必ず仮放免を許さなければならないとする法理はない」(昭51・12・13東京地裁判決)としています。そのため,取消訴訟提起=仮放免許可ではないとご理解下さい。

6.まとめ

仮放免の許可がなされる否かについては,

・入管の実務動向により仮放免の許否判断は大きく変化する
・退令前仮放免よりも,退去強制令書発布後,一定期間を経過して行う退令仮放免の方が許可の可能性は高い

というのが,入管実務に携わる私共の所感です。

2012年ごろは退去強制令書発布後,一定期間を経過して行う退令仮放免は多く認められていた印象がありますが,それ以降,仮放免の運用は厳格化されています。2020年現在,仮放免許可申請については,退令前仮放免及び退令仮放免のいずれにおいても,非常に厳しい判断がなされています。

今後の入管実務の動向に注視の必要はありますが,少なくとも仮放免許可を得ることを目的として,退去強制令書発布を受けたにも関わらず長期収容者になることを選択したり,取消訴訟を提起すれば仮放免が認められると安易に考えることのないようにして下さい。

収容者の方は,収容期間が長期化することで健康面のみならず,精神的にも強いストレスに侵されています。誤った判断で収容が長期化することがないよう,仮放免の許可状況,可能性を考慮しながら,専門家を交えて冷静に判断することをお勧めします。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 渡邉 直斗

・日本行政書士会連合会(登録番号第19260365号)
・大阪府行政書士会(会員番号第7712号)
兵庫県出身。大阪オフィス長として,大学や自治体,企業向けのセミナーにも登壇。外国人ビザ申請,国際結婚,帰化許可申請などの国際業務を専門としている。

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