就労ビザのカテゴリーとは?仕組みや対象,区分について解説!
就労ビザにおいて,外国人を雇用する会社側がカテゴリーに分類されていることはご存じでしょうか。カテゴリーは「企業の規模」によって分類され,カテゴリーによって申請に必要な書類の種類や審査にかかる日数などが異なります。
就労ビザ申請の準備をスムーズに行うためにも,カテゴリーの内容について知っておくことは重要です。
このページでは,日頃あまり意識されることがない就労ビザのカテゴリーについて,専門の行政書士が解説します。
Index
1.就労ビザのカテゴリーの仕組み
出入国在留管理庁は,外国人を雇用する会社等の規模によって,「カテゴリー1」から「カテゴリー4」まで4つのカテゴリーに分類しています。
「カテゴリー1」の代表格は,上場企業です。
「カテゴリー4」は,開業したばかりの新設会社などが該当します。
この2つを比較すると,カテゴリー1の企業は上場企業であることから,社会的な信用性もあり,また事業の安定性や継続性も高いと考えられます。
その一方で,カテゴリー4は,開業したばかり会社なので,外国人材を雇用するといっても,事業の安定性や継続性に疑念を抱かれやすくなります。
就労ビザで会社側をカテゴリー分けしたのは,このように規模の異なる会社を一律の基準で審査することが不合理と考えられたことが背景にあります。
その結果,カテゴリー1は就労ビザの際の入管への提出書類を簡素化し,在留期間については,最長の「5年」が取得しやすい運用が取られています。
それに対してカテゴリー4については,入管への提出書類の簡素化の措置はなく,在留期間についても原則として「1年」が付与される運用が取られています。
2.就労ビザでカテゴリーの対象になるものは?
就労ビザには,活動内容によってさまざまな種類があります。このなかで雇用する企業(=所属機関)のカテゴリー区分があるのは,現在,以下の6種類です。
②経営・管理
③研究
④技術・人文知識・国際業務
⑤企業内転勤
⑥技能
上記の就労ビザを申請する場合には,所属機関がカテゴリー1~4のうちどれに該当するのか事前に確認しましょう。
3.所属機関のカテゴリー区分
それでは,就労ビザにおける所属機関のカテゴリーについて,それぞれ見ていきましょう。
外国人材を雇用される側の企業ご担当者様においては,自社がどのカテゴリーに属しているかを知ることで,ビザ申請の際に入管へ提出する書類が明らかになります。
(1)カテゴリー1
出入国在留管理庁では,以下のいずれかに該当する場合に「カテゴリー1」として取り扱うこととしています。
- 日本の証券取引所に上場している企業
- 保険業を営む相互会社
- 日本又は外国の国・地方公共団体
- 独立行政法人
- 特殊法人,認可法人
- 日本の国,地方公共団体の公益法人
- 法人税法別表第1に掲げる公共法人
- 高度専門職省令第1条第1項各号の表の特別加算の項の中欄イ又はロの対象企業
(イノベーション創出企業) - 一定の条件を満たす企業等
「一定の条件を満たす企業等」とは
一定の条件を満たす企業等とは,関係省庁の各種認定制度で認定を受けた企業のことを指します。
対象となる制度について,省庁ごとにまとめましたのでご覧ください。
管轄官庁 | 認定制度 | 認定者 | 以下の認定を受けているもの |
厚生労働省 | ユースエール認定制度 | 都道府県労働局長 | ユースエール認定企業 |
厚生労働省 | くるみん認定制度 | 都道府県労働局長 | くるみん認定企業 |
プラチナくるみん認定制度 | プラチナくるみん認定企業 | ||
厚生労働省 | えるぼし認定制度 | 都道府県労働局長 | えるぼし認定企業 |
プラチナえるぼし認定制度 | プラチナえるぼし認定企業 | ||
厚生労働省 | 安全衛生優良企業公表制度 | 都道府県労働局長 | 安全衛生優良企業 |
厚生労働省 | 職業紹介優良事業者認定制度 | 指定審査認定機関 | 業紹介優良事業者 |
厚生労働省 | 製造請負優良適正事業者認定制度 (GJ認定) |
指定審査認定機関 | 製造請負優良適正事業者 |
厚生労働省 | 優良派遣事業者認定制度 | 指定審査認定機関 | 優良派遣事業者 |
経済産業省 | 健康経営優良法人認定制度 | 日本健康会議 | 健康経営優良法人 |
経済産業省 | 地域未来牽引企業制度 | 経済産業大臣 | 地域未来牽引企業 |
国土交通省 | 空港における構内の営業承認制度 | 地方航空局長又は 空港事務所長 |
空港管理規則上の第一類構内営業者又は 第二類構内営業者 |
消費者庁 | 内部通報制度認証 (自己適合宣言登録制度) |
内部通報制度認証事務局 | 内部通報制度認証(自己適合宣言 登録制度)登録事業者 |
(2)カテゴリー2
「カテゴリー1」に該当せず,以下のいずれかに該当する場合は「カテゴリー2」として取り扱われます。
- 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中,給与所得の源泉徴収票合計表の源泉徴収税額が1000万円以上ある団体・個人
- 「在留申請オンラインシステム」の利用申出の承認を受けている機関
(3)カテゴリー3
「カテゴリー1」「カテゴリー2」に該当せず,以下に該当する場合は「カテゴリー3」として取り扱われます。
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人
(4)カテゴリー4
- カテゴリー1~3のいずれにも該当しない場合は「カテゴリー4」として取り扱われます。
4.カテゴリーによる違い
所属機関のカテゴリーによって,就労ビザ申請の必要書類と審査期間に違いがあります。
(1)必要書類が違う
就労ビザの代表格である在留資格「技術・人文知識・国際業務」の在留資格認定証明書交付申請を例に,申請時に必要な書類を見てみましょう。
【全カテゴリー共通書類】
①在留資格認定証明書交付申請書
②申請人の証明写真(縦4cm×横3cm)
③労働条件通知書または雇用契約書の写し
④【専門学校を卒業し専門士又は高度専門士の称号を付与された者のみ】専門士または高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書
【カテゴリー1】共通書類+以下のいずれか
- 「四季報」の写し又は日本の証券取引所に上場していることを証明する文書(写し)
- 主務官庁から設立の許可を受けたことを証明する文書(写し)
- 高度専門職省令第1条第1項各号の表の特別加算の項の中欄イ又はロの対象企業(イノベーション創出企業)であることを証明する文書
- 「一定の条件を満たす企業等」であることを証明する文書
【カテゴリー2】共通書類+以下のいずれか
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
- 「在留申請オンラインシステム」に係る利用申出の承認を受けていることを証明する文書
【カテゴリー3】全カテゴリー共通書類+以下のもの
-
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
- 申請人の活動の内容等を明らかにする次のいずれかの資料
・労働契約を締結する場合は,労働条件通知書
・日本法人である会社の役員に就任する場合は,員報酬を定める定款の写し又は役員報酬を決議した株主総会の議事録
・外国法人内の日本支店に転勤する場合及び会社以外の団体の役員に就任する場合は地位(担当業務),期間及び支払われる報酬額を明らかにする所属団体の文書 - 申請に係る技術又は知識を要する職務に従事した機関及び内容並びに期間を明示した履歴書
- 申請人の学歴又は職歴等を証明する次のいずれかの文書
・大学等の卒業証明書又はこれと同等以上の教育を受けたことを証明する文書
・在職証明書等で,関連する業務に従事した期間を証明する文書(大学,高等専門学校,高等学校又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に係る科目を専攻した期間の記載された当該学校からの証明書を含む。)
・IT技術者については,法務大臣が特例告示をもって定める「情報処理技術」に関する試験又は資格の合格証書又は資格証書(※共通書類④を提出する場合は不要)
・外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事する場合は,関連する業務について3年以上の実務経験を証明する文書(※大学を卒業した者が翻訳,通訳又は語学の指導に従事する場合は不要)
- 法人の登記事項証明書
- 事業内容を明らかにする次のいずれかの資料
・勤務先等の沿革,役員,組織,事業内容(主要取引先と取引実績を含む。)等が詳細に記載された案内書
・勤務先等の作成した上記に準ずるその他の文書 - 直近の年度の決算文書の写し。新規事業の場合は事業計画書
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出できない理由を明らかにする次のいずれかの資料
【源泉徴収の免除を受ける機関の場合】外国法人の源泉徴収に対する免除証明書その他の源泉徴収を要しないことを明らかにする資料
【源泉徴収の免除を受けない機関の場合】以下のいずれか1つ
・給与支払事務所等の開設届出書の写し
・直近3か月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(領収日付印のあるものの写し)
・納期の特例を受けている場合は,その承認を受けていることを明らかにする資料
以上のように,カテゴリー1,2と比較するとカテゴリー3,4の方が準備する必要書類が多くなります。
(2)審査期間が違う
ビザ申請の審査期間についても,所属機関のカテゴリーによって長さに違いがあります。
出入国在留管理庁が公表している審査期間の目安はおよそ2か月以上です。
カテゴリー別の審査期間は,カテゴリー1と2なら1ヶ月以上,カテゴリー3なら2ヶ月以上,カテゴリー4になると3ヶ月以上かかることもあります。
カテゴリー3と4は,必要書類が多い分,審査にかかる時間も必然的に長くなります。
なお,審査期間はあくまでも目安で,提出する入管局の混雑状況や申請人の状況によって前後します。
5.就労ビザにおける所属機関カテゴリーのまとめ
今回は,就労ビザにおける所属機関のカテゴリーについてご紹介しました。
カテゴリー1,2に該当する所属機関であれば提出資料が簡素化され,審査期間も短くなる傾向にあります。
これは,上位カテゴリーの所属機関については,そもそも事業の安定性や継続性が高いと評価されていることに基づきます。
他方で,先述のとおり,カテゴリー3,4の所属機関については,その規模から事業の安定性や継続性が相対的に低いと判断され,就労ビザ申請の審査は慎重に行われることになります。
もっとも,どのカテゴリーであっても,立証すべき事項をきちんと立証すれば,就労ビザを取得することができます。
そのため,自社のカテゴリーに合った就労ビザの申請準備を行うことは,外国人材の雇用を進めていくうえで,とても重要な視点なのです。
これから外国人材の雇用をご検討されている企業様がいらっしゃいましたら,是非当社までお問い合わせください。
現在の状況をお伺いのうえ,貴社が該当するカテゴリーや最適な手続き方法についてご案内させていただきます。