依田 隼弥

特定技能「自動車運送業」と特定活動55号を徹底解説!採用フローや注意点は?

特定技能「自動車運送業」と特定活動55号を徹底解説!採用フローや注意点は?

日本の運送業界、とりわけ物流・旅客輸送の現場はかつてない大きな転換期を迎えています。いわゆる「2024年問題」による労働時間の制限と少子高齢化に伴う深刻なドライバー不足。経営者の皆様の中には「仕事はあるのに、車を動かす人間がいない」という危機感を抱いている方も多いはずです。

こうした状況の打開策として、2024年4月に創設されたのが、特定技能「自動車運送業」です。しかし、この制度を実際に活用しようとすると必ず現れるのが「特定活動55号」です。

「特定技能だけではダメなのか?」「55号とは具体的に何を準備する期間なのか?」といった疑問を解消するため、このコラムでは制度の仕組みから採用・運用実務、注意点までを徹底的に解説します。

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1. なぜ特定技能「自動車運送業」と「特定活動55号」が必要なのか

日本の経済を支える物流(トラック)と、地域住民の足となる旅客(タクシー・バス)。それらの担い手であるドライバーの有効求人倍率は全産業平均を大きく上回り続けています。

(1)「2024年問題」と外国人材への期待

2024年4月から、トラックドライバー等の時間外労働に年960時間の上限が適用されました。これにより、1人のドライバーが運べる荷物の量が減少し、さらなる人員確保が急務となっています。この課題に対し、政府は「特定技能」の対象に自動車運送業を追加することを決定しました。

(2)免許制度という「最大の壁」を突破するための「特定活動55号」

他分野(外食や建設など)の特定技能と決定的に異なるのは、「日本の公道を運転するためには、日本の運転免許が必要」という点です。「入国してから日本の運転免許を取得するまでの空白期間」を埋めるために設計されたのが、「特定活動55号」なのです。

ちなみに、「国際運転免許証」を持っていたとしても運転できるのは自家用車のみで、仕事に使うことはできません。この「特定活動55号」期間中に日本の運転免許を正式に取得することが、特定技能としてプロのドライバーの道を歩むための、避けては通れない必須条件となります。

2. 特定技能「自動車運送業」の3つの区分と業務内容

自動車運送業の特定技能1号には、大きく分けて3つの区分が存在します。それぞれの業務内容と、求められる役割を整理します。

(1)トラック区分(貨物自動車運送事業)

主に積載量や用途に応じたトラックを運転し、貨物を輸送する業務です。

  • 主な業務: 運転業務、荷役作業(積み降ろし)、荷受人との連絡調整。
  • 期待される役割: 物流センター間の長距離輸送や、ラストワンマイルの配送。

(2)タクシー区分(一般乗用旅客自動車運送事業)

タクシーを運転し、乗客を目的地まで運ぶ業務です。

  • 主な業務: 旅客の運送、接客、代金決済、車両の清掃。
  • 期待される役割: 観光客対応や、移動困難な高齢者のサポート。

(3)バス区分(一般乗合旅客・一般貸切旅客自動車運送事業)

路線バスや観光バスを運転し、多数の旅客を運送する業務です。

  • 主な業務: 旅客の運送、車内安全の確保、観光案内(付随業務)。
  • 期待される役割: 地域の路線維持や、インバウンド観光需要への対応。

3. 特定活動55号と特定技能1号の違い

この2つはセットで運用されますが、法的性質やできる業務は全く異なります。まずは以下の比較表で、その違いを正確に把握してください。

比較項目 特定活動55号(準備期間) 特定技能1号(就労期間)
正式名称 特定自動車運送業準備活動 特定技能1号(自動車運送業)
主な目的 日本の運転免許取得・研修 プロドライバーとしての実務従事
運転業務 原則不可(指定教習所内や訓練は可) 可能(営業車両の運転)
付随業務 洗車、点呼補助、荷役の補助など 運送に付随する全般業務
在留期間 トラック運送業は上限6か月、タクシー・バス運送業は上限1年(特定技能の5年にカウントされません) 最大5年間
日本語要件 N4またはN3以上 取得済み
家族帯同 不可 不可

4. 特定活動55号を活用した「採用から独り立ち」までのフロー

外国人ドライバーを受け入れる際、最も一般的な流れは「特定活動55号」で来日させ、国内で免許を取得させた後に「特定技能1号」へ切り替えるというステップです。

(1)ステップ1:海外での選考と試験合格

まずは現地で候補者を選定します。候補者は以下の2つの試験に合格している必要があります。

  1. 特定技能評価試験(自動車運送業分野): 各区分に応じた専門知識の試験。
  2. 日本語能力試験: トラック:N4以上/タクシー・バス: 原則としてN3以上

※以下の条件を満たす場合はN4以上での受け入れも可能です。

タクシー・バスの日本語要件緩和の条件

  • 「日本語サポーター」が同乗して意思疎通を補助する
  • 入国後にN3取得を目指す計画的な学習支援体制が整っている
  • 離島や半島地域など、特定の自治体内で運行する乗合バスの場合は以下の2条件

①外国人ドライバーが地域住民とスムーズに共生できるよう、自治体と企業が連携して取り組むことを証明する書類を、自治体から発行してもらう必要があります

②事故などの緊急時に、N4レベルの語学力でも正確に通報・連絡ができるよう、翻訳アプリやビデオ通話システム、GPS管理などのICT環境を整備しなければなりません

(2) ステップ2:特定活動55号による入国

企業と雇用契約を結び、「特定活動55号」の在留資格で入国します。この期間、企業は給与を支払う義務がありますが、まだ仕事で運転させることはできません。

(3)ステップ3:免許の切り替え・取得

ここが最大の山場です。

  • 外免切替(外国免許切替): 母国の免許を日本の免許に切り替えます。
  • 教習所での取得: 切り替えが難しい場合や、二種免許が必要な場合は日本の教習所に通います。
  • 新任運転者研修: 国土交通省が定める法定研修を受講します(タクシー運送業及びバス運送業の1号特定技能外国人を受け入れる場合のみ必要)

(4)ステップ4:在留資格の変更申請

無事に日本の運転免許(トラックは一種、バス・タクシーは二種)を取得したら、速やかに入管へ「特定技能1号」への変更申請を行います。許可の効力が生じた時(新しい在留カードの交付を受けた時)から、正式にドライバーとして業務を開始できます。

5. 受け入れ企業に求められる要件

自動車運送業は、一歩間違えれば人命に関わる職種です。そのため、受け入れ企業にも他分野より厳しい基準が設けられています。

(1)「Gマーク」等の認証取得

自動車運送業全体として「運転者職場環境良好度認証制度(働きやすい職場認証制度)」に基づく認証を受けていること、また、トラック分野では、安全性優良事業所の認定(Gマーク)を受けていることが、特定技能外国人を受け入れるための必須の基準となっています。また、過去に重大な交通事故を起こしていないことや、労働・社会保険・租税に関する法令を遵守していることが厳格にチェックされます。

(2)「協議会」への入会

「協議会」は、国が主体となって設置する、制度運用のための公的な組織です。自動車運送業で特定技能外国人を受け入れる企業は、国土交通省が組織する「自動車運送業特定技能協議会」に入会しなければなりません。

(3)登録支援機関との連携

特定技能外国人の生活支援(役所の手続き、住居の確保、日本語学習のサポートなど)を自社で行うのが難しい場合、専門の「登録支援機関」に委託することが一般的です。特に運送業の場合、免許取得のスケジュール管理など専門的なサポートが不可欠です。
行政書士法人第一綜合事務所は、登録支援機関として多くの企業様のサポートをして参りました。
ぜひご相談ください。

6. 失敗しないための5つのポイント

制度の運用にあたり、特にトラブルになりやすいポイントをまとめました。

外国人ドライバー受け入れ成功への5つのポイント

  • 母国の滞在歴の確認: 外免切替を行うには、母国で免許取得後「3ヶ月以上」滞在していた実績が必要です。これがないと、日本でゼロから免許を取り直すことになり、コストと時間が膨大になります。
  • 日本語の「壁」: 特にタクシーやバスはN3以上の日本語能力が必須です。事故時の対応や無線連絡、客先でのコミュニケーションには、試験以上の実践的な語学力が求められます。
  • 「55号」期間中の業務範囲の徹底: 特定活動55号期間中に、日本の運転免許を持たずに公道を運転させることは道路交通法違反(無免許運転等)に該当します。また、日本の運転免許取得後であっても、在留資格を特定技能1号へ変更する前にドライバーとして営業運転に従事させた場合は、入管法上の資格外活動となり「不法就労助長罪」に問われることになります。この期間はあくまで「見習い・訓練」であることに注意が必要です。
  • 免許取得コストの負担を明確にする: 教習所代や試験代を誰が負担するのか、契約時に明確にしておく必要があります。企業が免許取得費用を立て替える場合、一定期間の勤務を条件に返済を免除する契約や、退職時に一括返済させる契約は法令により固く禁じられています。企業が全額負担するか、当該費用を賃金に含めて補填するなどの適法な対応が求められます。
  • 事故時の責任所在を明確にする: 万が一の事故に備え、任意保険の加入はもちろん、社内規定(就業規則)に外国人材向けの安全教育と責任範囲を明記しておくべきです。

7. 企業が「特定活動55号」を活用するメリットとデメリット

(1)メリット:教育期間の確保

特定活動55号の期間は、特定技能1号の5年間にはカウントされません。つまり、この期間でじっくりと日本の交通マナー、自社のルート、接客の基礎を教えることができます。教育が終わった段階で「5年間の即戦力」が手に入るのは、企業にとって非常に大きな利点です。

(2) デメリット:コストと帰国リスク

55号の期間中も運転業務はできませんが給与の支払いが必要です。さらに教習所費用などの投資も発生します。もし万が一、この期間中に免許が取得できなかった場合、特定技能へ移行できずに帰国させなければならず、投資が回収できないというリスクもゼロではありません。

8. 他業種からの「資格変更」における注意点

すでに日本にいる「技能実習生」や、他の特定技能(建設など)で働いている外国人をドライバーとして採用したいというニーズも増えています。

(1) 新制度「育成就労」および従来の「技能実習」からの移行

法改正により、従来の技能実習制度は発展的に解消され、特定技能と対象分野を原則一致させた新たな「育成就労制度」が創設されます。新制度ではキャリアアップの道筋が明確化されており、今後は同分野の育成就労(原則3年間)を修了した人材が、スムーズに特定技能へ移行できるようになります。 一方、他分野の育成就労修了者や、従来の他職種の技能実習生を新たにドライバーとして採用する場合は、原則として「自動車運送業分野特定技能1号評価試験」への合格が必須となります。

※トラック運送業における特例:修了した技能実習2号の職種・作業の種類にかかわらず、技能実習2号を良好に修了した外国人は、国際交流基金日本語基礎テスト及び日本語能力試験(N4以上)のいずれの試験も免除されます。
(新制度への移行後も、従来の技能実習生からの移行には引き続きこの特例が適用されます)

(2)「特定活動55号」への変更は可能か

すでに日本に在留している外国人が、運送業に転身するために「特定活動55号」へ変更することも可能です。ただし、その場合も「特定技能の試験に合格していること」が前提となります。

9. まとめ:制度を正しく理解し、2024年問題を突破しましょう

特定技能「自動車運送業」と「特定活動55号」は、ドライバー不足に悩む企業にとって、極めて強力な武器になります。

  • 特定活動55号:免許取得と研修のための「準備期間」。
  • 特定技能1号:免許取得後の「本番(就労)期間」。
  • 外免切替の要件や日本語能力(N3/N4)の把握が成功の鍵。

このステップを正しく理解し、計画的な採用活動を行うことで、貴社の輸送能力は劇的に改善されるはずです。

「まずは何から始めたらいいのか?」「自社が受け入れ要件を満たしているか知りたい」という方は、ぜひ行政書士法人第一綜合事務所へお問い合わせください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 依田 隼弥

・日本行政書士会連合会(登録番号第24081844号)
・東京都行政書士会(会員番号第15335号)
山梨県出身。東京オフィスに所属し,外国人ビザ申請,国際結婚手続き,永住権取得など国際業務を専門としている。

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