2026.10.22 依田 隼弥 興行ビザ短期滞在興行3号 映画・PVロケ撮影・海外オーディションのビザ手続きと注意点を行政書士が解説 1.映画・ドラマ・PVロケ撮影における「興行3号」の一括手続き 海外の映画作品、テレビドラマ、ミュージックビデオ(PV)のロケーション撮影を日本国内で行う場合、出演するキャスト(俳優・モデル)だけでなく、撮影を支える制作クルー(監督、撮影監督、音声、照明、美術、メイク、衣装等)のビザ手続を一体的に進める必要があります。これらの活動は、上陸基準省令の「興行3号(放送番組または映画の製作に係る活動)」に分類されます。 (1) 撮影クルー全員の役割と雇用関係の提示 制作チーム全体をまとめて申請する場合、招へい機関(日本側の制作プロダクションや調整会社)は、各人員の役割一覧(クルーリスト)、パスポートコピー、専門的な職歴証明書、招へい機関との請負・委託契約書を提出します。単なる雑務ではなく、映像製作に直接必要な専門技術を有するスタッフであることを明確にします。 (2) 移動を伴う撮影ロケ計画書と滞在日程表 映画やPVのロケ撮影は、東京、京都、北海道、沖縄など複数の自治体や屋外ロケーションを移動しながら行われることが一般的です。入管審査においては、以下の項目を明記した「滞在日程表・ロケ計画書」を提出します。 ロケ計画書記載項目1:各日程の撮影場所(施設名、自治体名、屋外ロケ地の住所) ロケ計画書記載項目2:移動経路および交通手段(ロケバス、新幹線、国内線航空便等) ロケ計画書記載項目3:滞在先ホテル・宿泊施設の名称および所在地 ロケ計画書記載項目4:撮影許可の取得状況(公道使用許可、施設利用許可等の確保状況) 2.海外オーディション・スカウト企画のビザ選定 海外の新人モデル、アーティスト、ダンサーを発掘するために日本国内でオーディションやスカウト選考会を開催する場合、参加者の渡航目的に応じたビザ選定が必要です。 (1) 審査・選考のみの場合(短期滞在) オーディション参加者が日本国内でパフォーマンスの審査や選考を受けるのみであり、来日に関して対価としての報酬が支払われず、一般観客を集めて入場料を徴収する興行イベントを行わない場合は、「短期滞在(商用・オーディション参加)」での入国が認められるケースがあります。渡航費や滞在費の負担関係を証明する書類を用意します。 (2) 有観客選考ライブやパフォーマンス撮影を伴う場合(興行1号/興行3号) オーディションの過程を一般観客に公開してチケットを販売する公演(選考ライブ等)を実施する場合は「興行1号」、オーディションの模様を収録してテレビ番組やWebコンテンツとして配信・放送する場合は「興行3号」の取得が必要です。参加者に賞金や出演手当が支払われる場合も就労資格の手続を行います。 3.過密スケジュールに対応するための申請手順 ロケ撮影やオーディション企画は、キャストのスケジュール調整や天候、撮影許可の進捗により、来日日程が急遽決定・変更されることが少なくありません。過密日程の中で円滑に許可を取得するための実務手順を整理します。 事前資料の早期集約:企画決定直後に、キャスト・クルーのパスポートデータ、履歴書、過去の作品実績書、契約書案の収集を開始する。 事情説明書の添付:COE交付申請時、ロケ撮影の開始日や試写・公開日程が決まっている旨の事情説明書(理由書)を添付し、迅速な審理を要望する。 専門窓口の活用:日本側制作会社が行政書士等の専門家と連携し、出入国在留管理局との事前相談や書類チェックを滞りなく行う。 在外公館での査証発給手配:COE交付後、現地の日本大使館・領事館へ速やかに連絡し、査証発給予約の手配を行う。 4. ロケ撮影・海外オーディション現場で多発するトラブルと回避策 大規模な撮影クルーの一括招へいや海外オーディション企画では、ロケ現場ならではの突発的なトラブルが発生します。 事例1:ロケ地変更や天候不順による「申請外ロケーション撮影」 当初提出したロケ計画書以外の自治体やロケ地(例:雨天のため急遽別の全天候型スタジオや他県の施設に変更)で撮影を行ってしまったケース。 原因: 興行ビザが「指定された日程・場所・活動内容」に対して許可されていることに対する制作現場の認識不足。 対策: 天候リスクや予備ロケ地が想定される場合は、COE申請の段階で「予備ロケ地(候補地)」も含めた撮影計画書を作成し、事情説明書でカバーしておくことが重要です。無許可で大幅にロケ地を変更すると、資格外活動や管理不十分を理由に次回以降のビザ申請に悪影響を及ぼします。 事例2:スタイリスト・ヘアメイク等「技術クルー」の経歴立証不足による不許可 主演俳優のビザは無事下りたが、専属スタイリストや特殊メイクアーティストのビザが「専門技術の証明不足」で不許可となり、撮影プラン変更を余儀なくされたケース。 原因: 審査官に対し「日本国内のスタッフでは代替できず、なぜその人物でなければならないのか」の理由と、その人物の専門的経歴(過去の作品クレジット、ポートフォリオ等)を証明しきれなかったこと。 対策:…
2026.10.22 渡邉 直斗 興行ビザ興行1号ライブハウス興行3号 ライブハウスの100人会場要件と興行ビザ実務を行政書士が解説 1. 興行1号ロの「100人会場要件」と飲食提供の審査基準 演劇、演奏、ダンス等の興行を行う場合、「興行1号」が適用されます。このうち、「興行1号ロ」の施設緩和規定は、小規模なライブハウスや小劇場等での海外演者の招へいを円滑化するための要件として設置されています。 基準1(飲食提供制限) 客席部分において飲食物を有償で提供しないこと(非営利目的の施設を除く)。 基準2(接待の禁止) 客の接待(風営法第2条第3項に規定する接待)をしない施設であること。 基準3(客席収容人員) 客席部分の収容人員が100人以上であること(または営利を目的としない公私の機関が運営する施設)。 (1) ライブハウス・クラブでのアルコール提供・フード販売の注意点 実務上、質問が多い点が「ドリンク代(500円~600円等)をとってアルコールやソフトドリンクを提供するライブハウスで1号ロが使えるか」という点です。省令上は「客席において飲食物を有償で提供せず」と規定されています。そのため、バーカウンターが客席エリアと明確に区分されており、客席内で飲食の給仕(客席販売や注文取り)を行わない態様であれば基準を満たすと判断されるケースがあります。 ただし、テーブル席で料理や酒類を給仕する居酒屋・レストラン型の店舗や、接待を伴う風営法許可店舗では1号ロは適用できず、より要件の厳しい1号ハ(一般要件:舞台面積13㎡以上、控室面積9㎡以上、客接待防止体制等)が適用されます。 (2) 図面および客席数証明資料の提出実務 申請時には、施設の構造と客席数を客観的に証明するため、以下の資料等を提出します。 施設平面図:舞台、控室、客席エリア、バーカウンターの位置関係・寸法を明記した図面。 客席収容人員の算定書:有効客席面積に対する座席数、または立ち見客の収容算定根拠(通常1㎡あたり2〜3名等で換算)。 飲食給仕を行わない誓約書・概要説明書:客席内での有償給仕を行わない旨を説明する資料。 2.海外YouTuber・インフルエンサー招へい(興行3号)の実務 近年、自治体のインバウンド観光誘致や新商品のPR、ゲームタイアップ等で、海外の人気YouTuberやSNSインフルエンサーを日本に招待し、動画撮影や撮影取材を行う案件が急増しています。このようなWeb動画プロモーション案件には「興行3号」が適用されます。 興行3号イ:商品または事業の宣伝に係る活動(CM撮影、企業PR動画出演、観光プロモーション撮影等) 興行3号ロ:放送番組(有線放送含む)または映画の製作に係る活動 興行3号ハ:商業用写真の撮影に係る活動(ポスター、雑誌、Web広告写真等) 興行3号ニ:商業用のレコード、ビデオテープその他の記録媒体に録音または録画を行う活動 興行3号の申請では、演者自身の過去の芸能実績やチャンネル登録者数・インフルエンサーとしての活動実績を示す資料、招へい機関(広告代理店や制作会社)との委託契約書、撮影仕様書(ロケ地、日程、撮影内容)、日本人が従事する場合と同等以上の報酬が支払われることを証する文書を提出します。 3. リアル店舗興行(1号)と店舗ロケ撮影(3号)の審査視点の違い ライブハウスや店舗で海外ゲストを迎える際、それが「観客を入れたリアル公演(興行1号)」なのか「店舗を利用したPR動画・PV撮影(興行3号)」なのかによって、入管がチェックする審査の着眼点は全く異なります。 店舗運営会社やイベント制作会社が押さえるべき、実務上の審査視点の違いは以下の通りです。 (1)会場・店舗設備に関する要求基準 興行1号ロ(リアル公演): 客席面積、座席数(100人以上)、舞台・控室の構造、客席での飲食給仕の有無(セルフ販売か否か)など、店舗の物理的構造や営業形態が基準を満たしているかが厳しく審査されます。 興行3号(店舗ロケ・撮影): 会場や店舗の広さ・客席数・客接待といった施設基準は一切問われません。個人のスタジオ、商業施設の貸し切り、屋外ロケ地など、撮影計画に沿った場所であれば自由に設定可能です。 (2)観客の有無と風営法該当性 興行1号ロ(リアル公演): 入場料を支払う観客(集客)が存在するため、不法就労防止や治安上の観点から、風営法(特定遊興飲食店営業等)の該当性や「客の接待の有無」が厳しくチェックされます。 興行3号(店舗ロケ・撮影): 原則として観客を集めない(または撮影エキストラのみ)前提であるため、店舗の風営法区分ではなく「どのような商品・事業のPR・収録活動であるか」という企画内容の適法性が審査の中心となります。…