永住者の在留資格の取消しに関するガイドラインコラム

COLUMN

【取消しガイドライン公表】永住権取り消しの新基準を行政書士が解説

1.【現行制度】2026年現在でも「永住資格」が取り消されるケースとは? このコラムで取り扱う取り消し制度は、2024年(令和6年)6月14日に成立した改正入管法に基づき2027年(令和9年)4月1日から施行されます。これに先立ち、2026年10月1日、入管より運用指針となる「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」が正式に公表されました。 「これまでは永住資格は絶対に取り消されなかったのに、2027年4月の改正から初めて取り消されるようになる」と誤解されている方が少なくありませんが、それは事実ではありません。2026年現行の入管法においても、永住資格が取り消されるケース、あるいは「退去強制(強制送還)」となって日本から出国しなければならないケースは定められています。 まずは、2026年現在のルールを整理しておきましょう。現行法で在留資格(永住権を含む)が取り消される(または退去強制となる)代表的なケースは以下の通りです。 取り消し・退去強制の事由 具体的なケース 不正な手段での許可取得 偽造書類の提出など、偽りその他不正の手段で永住許可を受けた場合 住居地届出の違反 引っ越しをした日から90日以内に新住居地の届出を怠った場合や、虚偽の住居地を届け出た場合(正当な理由がある場合を除く) 重大な犯罪等(退去強制) 1年を超える実刑(拘禁刑)に処せられた場合や、薬物犯罪で有罪判決を受けた場合など 2026年現行法の在留資格取り消しについては、在留資格取消しが不安な方へ。日本で暮らし続けるための具体的な対策もご参照ください。 住居地の届出忘れには現行法でも要注意 実務上、意外と多いのが「引っ越し後の住居地届出(市区町村の役所等での手続き)の遅れ」です。「仕事が忙しくてつい忘れていた」「手続きが必要だとは知らなかった」という理由で90日を過ぎてしまうケースがあります。しかし、入管法上、正当な理由なく90日以内に新住居地を届け出ないと、現行法であっても在留資格の取り消し対象となる可能性があります。引っ越しをした際は、必ず速やかに手続きを行う習慣をつけましょう。 2.【2027年4月施行】入管法改正で何が変わる?公表された取消しガイドラインに基づく新基準 それでは、2027年4月から施行される改正入管法において、具体的にどのような「取り消し事由」が追加されるのでしょうか。 まず背景として、永住者は在留期間の更新手続き(ビザの更新)がないため、一部の悪質なケースにおいて、「永住許可を申請する時だけ公租公課(税金、年金、健康保険などの公的負担金)をまとめて支払い、許可された後は支払わない」といった、制度の趣旨に反する事態が発生していました。そこで、入管は「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」を公表しました。追加された取消事由とガイドラインでの解釈は以下の通りです。 (1)故意による公租公課の未納・入管法上の義務の不履行 ①故意による公租公課の未納 「公租」とは所得税・住民税・固定資産税などの租税全般、「公課」とは国民健康保険・健康保険・国民年金・厚生年金などの公的負担金を指します。永住者自身だけでなく、実質的に経営・管理する法人の公租公課をあえて支払わない場合や、無申告による未納も含まれます。 取消しガイドラインでは、「故意に」とは「支払義務があることを認識しているにもかかわらず、あえて支払をしない場合」と定義されています。収入・資産状況、滞納回数や期間、本人の言動等を総合考慮し、「支払意思がないことが明白と認められる悪質なケース」に限定して適用されます。 該当すると想定される事例: 長期間の滞納があり、無届で転居して所在不明になっている場合 催告や滞納処分を受けてもなお、相談もせず支払う意思を示さない場合 分納や猶予の約束期限までに納付しないことを繰り返す場合 脱税等で有罪判決を受けた場合や、財産隠蔽などの不正行為を行った場合 該当しない(取り消しの対象外となる)事例: 病気、災害、失業、事業不振、感染症流行、DV被害、ハラスメントによる離職など、やむを得ない事情で支払ができない場合 催告等に応じて支払意思を示し、分納や猶予措置を受けている場合 生活保護に準じた措置を受けている場合 給与から控除されているにもかかわらず、所属企業が納付していなかった場合 また、法律が施行される2027年4月より前(永住許可後から改正法の施行前まで)に故意に公租公課を支払っていなかった事実が判明した場合も、新法の取消事由に該当し得るとされています。ただし、過去の一時点の事情のみで直ちに取り消されるわけではなく、その後の支払状況や現在の対応も含めて総合的に判断されます。過去に未納期間がある場合でも、放置せずに早めに納付や自治体窓口への相談を行うことが重要です。 ②入管法上の義務の不履行 入管法に規定される義務を正当な理由なく遵守しなかった場合も、新たな取り消し事由となります。 該当する行為 在留カードの有効期間満了や紛失時に、正当な理由なく更新・再交付申請をしなかった場合(有効期間更新の失念や不注意による携帯忘れ等も違反自体には該当しますが、一度の不履行のみで取り消すことは想定されていません) 在留カードの偽変造・偽変造カードの行使・提供の未遂行為(実際に偽変造・行使等をした既遂の場合は、取消しではなく退去強制=強制送還の対象となります)…