コラム

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出国命令制度とは?

1.出国命令制度の対象者になるには? 出国命令制度の対象者は,下記の全ての要件を満たす外国人とされています。 ①速やかに日本から出国する意思をもって,自ら入国管理官署に出頭したこと。 ②不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと。 ③入国後に窃盗罪等の所定の罪により懲役又は禁錮に処せられていないこと。 ④過去に退去強制されたこと又は出国命令を受けて出国したことがないこと。 ⑤速やかに日本から出国することが確実と見込まれること。 (1)①速やかに日本から出国する意思をもって,自ら入国管理官署に出頭したこと。 出国命令制度の対象者の認定を受けるためには,自ら入管に出頭する(出頭申告と言います。)必要があります。したがって,入管や警察から摘発された場合には,出頭申告とは見られず,出国命令制度の対象者になりません。 また,速やかに日本から出国する意思が必要であることから,在留特別許可を求めて出頭申告した場合にも,出国命令制度の対象者とはなりません。 (2)②不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと。 出国命令制度の対象者は,いわゆるオーバーステイで日本に滞在している外国人に限定されています。 具体的には, ・入管法第24条2号の3(在留資格取消後の猶予期間経過) ・入管法第24条4号(在留期間経過) ・入管法第24条6号(特例上陸の期間経過) ・入管法第24条7号(在留資格取得未了の場合の在留期間経過) のいずれかに該当する場合です。 そのため,不法上陸事案,刑事処分を受けた事案などは出国命令制度の対象にはなりません。 (3)③入国後に窃盗罪等の所定の罪により懲役又は禁錮に処せられていないこと。 日本へ入国後,下記の罪により懲役又は禁錮に処せられた場合には,出国命令制度の対象者にはなりません。 刑法第二編 ・第十二章 住居侵入等 ・第十六章から第十九章まで 通貨偽造等,文書偽造等,有価証券偽造等,支払用カード電磁的記録不正作出等,印章偽造等 ・第二十三章 賭博等 ・第二十六章 殺人等 ・第二十七章 傷害等 ・第三十一章 逮捕及び監禁等 ・第三十三章 略取,誘拐及び人身売買等 ・第三十六章 窃盗及び強盗等 ・第三十七章 詐欺及び恐喝等…

【解決事例】オーバーステイの解決方法 ~出国命令制度編~

1.オーバーステイとは? 在留期間の更新(延長)又は在留資格の変更を受けないで, 在留期間経過後も日本に在留していることをオーバーステイと言います。オーバーステイは,不法滞在や不法滞留と言われ,入管法の違反類型の一つです。 また,オーバーステイは,入管法第24条4号ロで退去強制事由(いわゆる強制送還の理由)にもあげられており,ケースによっては警察に逮捕されることもあります。 今回の事例は,留学生の時に留学ビザが不許可になってしまい,そのままオーバーステイになってしまったというものです。 既にオーバーステイの状況であることから,迅速な対応が求められる案件です。 2.帰国するか日本在留を希望するかの選択!! オーバーステイの方はまず入管に出頭しなければなりません。入管へ出頭することを「出頭申告」と言います(いわゆる「自首」のこと。)。入管に出頭すると,帰国をするか,引き続き日本での在留を希望するかを出頭した外国人が選択することになります。 引き続き日本での在留を希望する場合には,退去強制手続きの中で,違反の態様,家族関係,生活状況さらには国際関係,国内事情など,日本社会に及ぼす影響を含め総合的に判断され在留の許否が決定されることになります。在留特別許可を得ることが出来れば,引き続き日本で在留することが認められます。 他方で,在留特別許可が認められない場合には,(一部例外はあるものの),入管法第5条第1項9号ロのとおり,原則退去されてから5年間は日本へ入国することは出来ません。 一方で,自らの意思で帰国を選択する場合には,出国命令制度の対象者になるか入管で判断されます。 出国命令対象者に認定をされれば,通常5年の上陸拒否期間が1年に短縮される等,多くのメリットがあります。 もっとも,帰国または在留希望の意思表示は,出頭申告の際の一回のみとなっています。そのため,在留特別許可の可能性が高いのであれば,退去強制手続きの中で,在留特別許可を求めるべきですし,在留特別許可の可能性が低いのであれば,出国命令制度を利用し,上陸拒否期間を1年に短縮するのが賢明な判断とされています。 3.オーバーステイが解決できる出国命令制度とは? 出国命令制度は,不法滞在者を5年間で半減させるという計画に基づき,平成16年の入管法の改正に伴い創設された制度です。不法残留者のうち一定の要件を満たす場合について,通常の退去強制手続を執ることなく,また身柄の収容をされないまま簡易な手続きで出国を可能にする制度です。 出国期限の指定によって,その期間の日本での在留が合法とされ,また出国後に再度日本に上陸する場合,上陸拒否期間が1年となる等,通常の退去強制の手続きを受けた場合に比べ,多くのメリットがあります。 4.どのような場合に出国命令制度が認められるか? 入管法第24条の3第1項に出国命令制度を利用できる場合の要件が記載されています。 以下では,それぞれの要件について解説します。 ①速やかに日本から出国する意思をもって,自ら入国管理官署に出頭したこと。 →警察や入管から摘発を受けてから帰国の意思を示しても,本要件には該当しません。また,在留特別許可を求めて出頭申告をした場合にも,本要件には該当しません。 ②不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと。 ③入国後に窃盗罪等の所定の罪により懲役又は禁錮に処せられていないこと。 →オーバーステイ以外の退去強制事由がある場合には,本要件には該当しません。 ④過去に退去強制されたこと又は出国命令を受けて出国したことがないこと。 →過去にオーバーステイや退去強制を受けていないことが要件になっています。もっとも,過去にオーバーステイ歴はあるものの,その後の手続きで在留特別許可を得た場合には,退去強制歴も出国命令制度による出国歴もないため,本要件に該当します。 ⑤速やかに日本から出国することが確実と見込まれること。 →出頭申告時に航空チケットなどを準備している場合と文献等での記載が見受けられますが,出頭申告の際は帰国日が決定していないため,航空チケットをご持参いただく必要は実務上ありません。後日に入管担当者から航空チケットの購入時期は指示されますので,パスポート,帰国費用を準備していれば本要件に該当します。なお,帰国費用が準備できない場合には,本要件に該当しない可能性がありますのでご注意ください。 5.オーバーステイが解決できる出国命令制度のメリットは? ここでは,上記で記載した出国命令制度のメリットについて,詳細を解説します。 ①出国命令制度の認定を受けることができれば,法律上,収容されることはありません。 出国命令制度が出来るまでは,自ら入管へ出頭をした場合には,仮放免(いわゆる保釈)を認めたうえで帰国を認める運用がされていました。 しかし,平成16年の入管法の改正に伴い創設された出国命令制度は,全件収容主義(入管法第39条)の例外を明示的に設けました。 そのため,出国命令制度対象者の認定を受けることが出来れば,入管に収容されることなく帰国することが出来ます。 ②出国命令対象者は,上陸拒否期間が1年に短縮されます。 入管法第5条第1項9号ロのとおり,通常は退去された日から5年間は日本へ入国することはできません。 しかし,出国命令対象者に認定された場合には,上陸拒否期間が1年に短縮されます(入管法第5条第1項9号)。 ③早期解決を図ることができます。 審査期間が長期化していることもあり(1年以上かかるケースもあります。),在留特別許可を求める場合には,長期間に亘り不安定な立場になってしまうことは避けられません。また,在留を希望した場合には,退去強制処分を受けてしまうかも知れないという恐怖から,精神的に参ってしまう方も少なくありません。 他方,出国命令制度を利用する場合には,出国命令対象者の認定判断は,1ヶ月以内に回答があることが多いです。在留を希望する場合と比較すると,審査期間が短くなる結果,精神的な負担は軽減されます。また,上陸拒否期間が1年に短縮されることから,結果的に早く確実な解決を図れる場合も往々にしてあります。…