2026.10.14 松原 桃子 帰化永住不動産登記国籍国籍申し出 【2026年10月5日から】不動産登記の国籍申し出が義務化:帰化申請への影響を解説 1.制度改正の背景:なぜ今、不動産所有者の「国籍等」を把握するのか? 従来、日本の不動産登記制度において、登記簿(登記事項証明書)に記載される所有者の情報は「氏名」と「住所」のみでした。そのため、国内にどれだけの外国人が不動産を所有しているのか、あるいは海外に住む外国人がどの土地を買収しているのかを公的に一元把握する仕組みが存在しませんでした。 法務省が今回の「国籍等の申し出義務化」に踏み切った背景には、大きく分けて2つの公的な目的が存在します。 (1)国土の適切な利用・管理と不動産市場の実態把握 近年の円安傾向やグローバル投資の活発化に伴い、都心部のアパート・マンションや、リゾート地、森林、水源地などが外国籍の個人や海外投資家によって取得されるケースが急増しています。 これに伴い、市場では「外国人による投機的な短期売買がマンション価格高騰の一因になっているのではないか」という指摘や、安全保障上の観点から「自国の重要な土地や防衛施設周辺の土地が、どの国の人物によって所有されているかを把握すべきだ」という議論が活発化しました。 国としては、「国土の適切な利用および管理の観点から、所有者の国籍情報をデータベースとして正しく把握・分析できるようにする」インフラ整備が必要となったのです。 (2)「国際相続」における準拠法確認と手続きの円滑化 もう一つの重要な目的が、相続登記の円滑化です。 日本国内にある不動産であっても、所有者が外国籍であった場合、その相続手続きには日本の民法ではなく「被相続人(亡くなった方)の本国法」が適用されます(法の適用に関する通則法第36条)。つまり、亡くなった方の国籍によって「誰が法定相続人になり、どのような割合で財産を分けるか」という根本的なルールが変わるのです。 あらかじめ所有者の国籍情報を公的に把握しておくことで、将来的に相続が発生した際に「どの国の法律に基づいて相続手続きを進めるべきか」の初期確認がスムーズになります。これは、近年深刻な社会問題となっている「所有者不明土地問題」や「海外在留者の連絡不通による空き家化」を防ぐためにも、欠かせない施策と位置付けられています。 2.在留外国人が最も気になるプライバシー問題:「登記簿に国籍が公開される」は大きな誤解 この報道が出た際、外国人住民の方々から多く寄せられたのが、「自分がどこの国の人間であるかが、誰でも取得できる登記簿謄本(登記事項証明書)に載ってしまうのか?」というプライバシーに関する懸念でした。 日本で長年生活し、地域社会に溶け込んで暮らしている外国人や、差別・偏見などの不利益を心配される方々にとって、国籍情報が公に晒されるかどうかは切実な問題です。 結論から明確にお伝えしますと、申し出た国籍情報が一般に公開される登記簿謄本に記載されることはありません。 今回の改正で提供された「国籍等」の情報は、法務局が内部で管理する「検索用情報管理ファイル」というシステムにのみ記録される非公開の内部情報です。 登記事項証明書(登記簿謄本)への印字:一切されません 一般第三者による閲覧・開示請求:原則として非公開です つまり、第三者が手数料を支払って法務局で登記簿謄本を取得したり、インターネットの登記情報提供サービスで確認したりしても、そこに国籍が表示されることはありません。 あくまで行政機関内部で所有者の身分関係を正しく管理し、将来の相続登記や行政間での情報連携(不動産ベース・レジストリ等)に活用するための情報管理システムです。したがって、マイホームを購入したからといって、近所の人や他人に国籍を知られる心配はありませんので、ご安心ください。 3.実務での変更点:不動産取得時に必要となる書類と注意点 では、実際に2026年10月5日以降に不動産を購入したり、相続によって名義変更(所有権移転登記など)を行ったりする場合、どのような手続きが必要になるのでしょうか。 まず知っておくべき重要な点は、「この申し出は外国人に限らず、日本国籍の人も含めた全員が対象になる」という点です。外国人だけを対象にする制度ではなく、新しく所有者になるすべての個人に対して国籍等の情報提供が求められます。 (1)申請書への記載 登記申請書を作成する際、新たに所有者(権利者)となる方の氏名や住所の欄に加えて、国籍を記載する項目が追加されます。 もし申請書に国籍等の記載がない場合、登記官から補正(不備の修正)を求められることになります。任意で省略できるものではなく、必須項目となります。 (2)国籍等を証明する確認書類の提出 国籍等を申し出る際には、その情報が正しいことを証する公的な公文書を添付する必要があります。具体的には、以下のような書類が該当します。 所有者の区分 主な確認書類 実務上の注意点 日本国内に住む外国人(中長期在留者・特別永住者) 国籍・地域が記載された「住民票の写し」 住民票1枚で「住所証明」と「国籍証明」を兼ねることができるため、スムーズです。在留カードのコピーでも対応可能です。 海外に住む外国人(非居住者・短期滞在者) 本国公証人等の「宣誓供述書」 + パスポートのコピー 日本の住民票がないため、本国の公証人や大使館・領事館で「国籍」を宣誓・認証した公的な書類(および日本語訳文)が必要です。 日本国籍の方…