コラム

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ベトナム人との国際結婚|手続きの流れ,要件,注意点を専門家が解説

1.国際結婚とは? 国際結婚とは,その人が国籍を持つ国(日本人であれば日本ですね)以外の国(本稿ではベトナム)での結婚手続きが発生する結婚のことを言います。 ざっくり言うと,日本で日本人同士がする結婚以外の婚姻はすべて国際結婚なのです。 日本とベトナムのように国籍が違う人同士の結婚のほか,例えば日本人同士が海外で結婚すること,外国人同士が日本で結婚することも国際結婚の一類型です。 ①国際結婚の成立のために必要なこと 国際結婚の成立には,原則として各当事者の国籍国の法律で結婚が有効であることが必要です。 結婚に関する法律(婚姻条件)は世界各国で異なります。 ですから,ある国の法律で結婚が認められても,別の国の法律では認められないということも起こってしまうのです。 日本人同士が日本で結婚する時には,日本の役所は双方の戸籍に記載された情報から「双方が日本の法律上婚姻要件を満たしているか否か?」が判断できます。 しかし,例えば日本人とベトナム人が結婚する場合,あるいは日本で外国人同士が結婚手続きをする場合など,日本の役所では「あなたは婚姻要件を満たしていますか?」と確認をすることができません。 外国籍の方の婚姻届が提出されるたびに,日本の役所がその国の法律を調べて婚姻条件を満たしているか審査するなどということは現実的ではありませんよね? そこで必要になるのが,その国の政府が発効する「婚姻要件具備証明書」です。 簡単に言えば,ある国の法的な婚姻条件に照らし「この人は結婚できますよ」(婚姻できる年齢に達していること,独身であることなど)と証明する書類です。 発行国によっては「独身証明書」などと言われることもありますが,独身であるだけでなく,国籍国の法律が定めている婚姻の成立要件を満たしていることが明らかになるものであれば,基本的には婚姻要件具備証明書と考えていただいて差支えありません。 国際結婚手続きのポイントは,結婚手続きをする国が自分の国籍国ではない方が,この婚姻要件具備証明書を取得しなければならないことです。 もっとも,婚姻要件具備証明書が発行されない国もありますので,国際結婚手続きを進める場合,婚姻要件具備証明書の発行可否は事前に確認することをおすすめいたします。 もう一点,日本人同士が日本で結婚する場合は,婚姻届が受理されれば自動的に双方の戸籍に「二人は結婚した」ということが記載され,法的に婚姻関係にあることが証明されます。 しかし国際結婚の場合,日本で結婚が法的に成立したとしても,日本の役所がそのことを外国の役所に通知して法的に処理されることはありません。逆も同じです。 ですから,特に国際結婚を考えている二人の片方もしくは両方が,結婚後は手続きをした国以外で暮らすことを考えているのであれば,ある国で国際結婚手続きをしたら,もう一方の国に「私達は結婚しました」と届け出る必要があります。 これが国際結婚手続きのもう一つのポイントです。 ②日本,ベトナム 婚姻要件の違い では,ベトナム人の婚姻要件はどうなっているのか? ベトナムの婚姻要件は 婚姻可能な年齢=男性満20歳以上,女性が満18歳以上。年齢によって父母の同意が求められることはありません 結婚の目的が問われます。ベトナム出国などを目的とした偽装結婚は禁止です 同性婚・既婚者との結婚はできません 再婚禁止期間の定めはありません などです。 日本と異なる点もありますので,参考にしてください。 例えば,ベトナムの法律には再婚禁止期間の定めはありません。 ただし,日本で婚姻手続きを行う場合は,日本の民法の再婚禁止期間が適用され,前婚の解消又は取消の日から100日を経過していることが要件とされています。 もっとも,ベトナム人女性が妊娠していないという医師の診断書を提出することによって100日を経過していない場合でも結婚することができます。 ③日本,ベトナム どちらを先にするべき? 日本人とベトナム人が結婚を考えている場合,日本とベトナム,どちらの国で先に手続きをすればよいのか? それが国際結婚を考えるお二人の関心事でしょう。 基本的には, 配偶者となるベトナム人がすでに日本で生活している場合先に日本→ベトナムで手続き 配偶者となるベトナム人がベトナムで生活している場合先にベトナム→日本で手続き…

【解決事例】ベトナム人の妻を家族滞在ビザで呼ぶ方法

1.家族滞在ビザとは? 家族滞在ビザとは,「就労可能な在留資格(外交,公用,特定技能1号,技能実習を除く)」,「文化活動」又は「留学(日本語学校など一部の教育機関を除く)」の在留資格をもって日本に在留する外国人の扶養家族を受け入れるために設けられたものです。例えば,就労ビザを取得し,日本の会社で働いている夫が妻および子を扶養している場合に,妻と子が家族滞在ビザを取得することによって,日本で一緒に暮らすことができるようになります。 上記の通り,「扶養」する家族を受け入れることが趣旨であることから,扶養者側の在留資格は就労可能なもの(具体的には「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「介護」「興行」「技能」「特定技能2号」「文化活動」「留学(基準省令第1号又はロに該当するもの。))に限定されます。また,扶養を受ける者は,資格外活動許可を得ない限り,就労活動を行うことはできないのが特徴です。 そして,「配偶者」は現に婚姻が法律上有効に存続中の方に限られ,離婚した方や内縁の配偶者,外国で有効に成立した同性婚による者は含まれません。「子」には嫡出子の他,養子および認知された非嫡出子が含まれます。成年に達していたとしても,学生の身分であるなど,親の扶養を受けている方は含まれます。なお,配偶者および子以外の家族は,「家族滞在」の在留資格に該当しません。 2.家族滞在ビザの要件 ① 扶養者の在留資格が,「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「介護」「興行」「技能」「特定技能2号」「文化活動」「留学(基準省令第1号又はロに該当するもの。)のいずれかに該当すること ② 扶養者が扶養の意思と扶養能力を有すること ③ 扶養を受ける側の配偶者または子が現に扶養を受け又は監護養育を受けていると認められること 以上が家族滞在ビザの要件です。 それでは,今回のAさんのケースで,具体的に見ていきましょう。 3.ベトナム人の妻を家族滞在ビザで呼ぶまでの道のり Aさんは,就職したばかりで所得課税証明書も納税証明書も入管に提出することが出来ないという事情があることから,上記2の要件のうち,特に②の扶養能力が問題となります。さらに,Aさんは留学時代にオーバーワークをしてしまっているという問題があります。そこで,まずはその事実が今回の申請にあたり,ベトナム人の妻を家族滞在ビザで呼ぶ際に,どのような影響をもたらすのかについて検討していきましょう。 (1)過去の法律違反が今回の申請に与える影響について ① オーバーワークについて 前提として,留学の在留資格は就労不能の在留資格であり,オーバーワーク(アルバイト時間の制限を超えた場合)は明白な資格外活動許可違反(入管法違反)となります。留学ビザを更新する際や,就労ビザへ変更を申請する場合に,その法令違反を理由に,ビザの更新や変更が不許可になってしまうこともあります。 その結果,留学生活を志半ばで断念せざるを得なくなったり,就職の場合には,企業から内定取り消しになる場合もあることは肝に銘じておいてください。 ② オーバーワークが家族滞在ビザ申請に与える影響について では,Aさんのオーバーワークの事実を前提として,ベトナム人の妻を家族滞在ビザで呼ぶ際に,どのような点に気を付けなければいけないか検討してみましょう。 法律違反の前歴は消えることはないので,オーバーワークに至った経緯を説明すると共に,二度とそのような事態を生じさせないことを明らかにする必要があります。どうして労働時間を超えてしまったのか,今後の再発を防ぐためにどのような対策を練るのかをしっかりと書面で具体的に示すことが重要になります。 (2)家族滞在ビザ取得時の要件「扶養能力」について では次に,Aさんの「扶養能力」の問題について検討していきましょう。 扶養能力については,扶養者の経費支弁能力と認める資産等は扶養能力と認めることとされています。例えば,扶養者が資格外活動許可の範囲内で行った就労活動(いわゆるアルバイト)による預貯金は扶養能力として認められます。また,奨学金も扶養能力として認められる可能性があります。そのため,給付金額および給付期間を明示した奨学金給付に関する証明書があれば,それらも有力な立証資料となります。 では,オーバーワークにより得た金銭で扶養能力を証明することは出来るのでしょうか? そもそもオーバーワークは法律違反であり,厳格な罰則規定が設けられています。法律違反によって得られた収入をもって資金の証明が出来てしまうとしたら,法の趣旨を形骸化してしまう恐れがあると考えられます。 よって,いくら資金の証明ができても,扶養能力としての資産には含まれないと考えられます。 そのため,Aさんがオーバーワークで得た収入は資産に含めることはできません。Aさんの場合には,許可の範囲内で適法に行った就労活動で得た収入,および他の有する資産をもって,扶養能力を証明する必要があります。また,奨学金を受けていた事実があれば,その証明書も立証資料となります。 Aさんの場合,入管法違反という重大なマイナス要素があるため,奥様の家族滞在ビザの許可を取得することは容易ではありません。しかし,過去の在留状況が不良だからといって,今回の申請もまた疑わしいと断定することは妥当性を欠きます。このことは過去の判例でも指摘されています(東京地裁平21.10.16判決「在留資格認定証明書不交付処分取消請求事件」)。 Aさんの場合も,上記の証明を丁寧に行うことで,無事ベトナム人の奥様の家族滞在ビザの許可を取得することができました。 4.ベトナム人の妻を家族滞在ビザで呼ぶ方法のまとめ 今回の事例では,①扶養者の過去の法律違反が今回の在留申請に与える影響,②家族滞在ビザ取得の要件である扶養能力に法律違反によって取得した資産が含まれるか,の2点が問題となりました。 当社に相談が寄せられるものには,このような解決が難しそうな複合的事案が数多くあります。しかし,一見困難に見える問題も,ひとつひとつを丁寧に読み解くことで,これまでも多くの案件について解決に導いてきました。 今回の案件も,他の事務所では家族滞在ビザの許可は難しいと判断された案件です。 ご自身では解決の糸口が見えず,悩まれている方は是非当社までご相談ください。…