株式会社サンパーク
海外事業本部部長
兼 成長戦略担当部長
葭本正樹 様
外国人材と一体感を生む教育で,
国籍の違いを突破するサービス価値を磨き,
世界基準のフードビジネスへと躍進させる。
PROFILE
1965年生まれ,2007年に株式会社サンパークに入社。2008年より取締役を務め以後,経営企画室室長,第2事業部部長,海外事業部部長などを担当し,海外進出プロジェクトを一手に引き受ける。現在では,海外事業本部部長 兼 成長戦略担当部長として世界5カ国,約40店舗を管理しながら,外国人材の採用なども手掛けている。
入管法の改正を契機に,外国人材の採用が進むフードビジネス業界。インバウンド対応や人手不足の解消を目的とした活用が多い中で,グローバル展開の前進力を強める担い手の採用を中心に推し進めているのが大阪に本社を構える株式会社サンパークです。どのような思いを持ち,毎年数多くの外国人材を採用しながら,教育に取り組み成果を挙げているのでしょうか。今回は,世界各地で出店する数十にものぼる店舗を管理し,外国人材の採用などを手掛ける成長戦略部部長で取締役の葭本(よしもと)正樹様にお話をお伺いしました。
大きな期待に応える,
外国人材を採用する思い
- 若松:
- 御社では,日本語能力検定でN1を持っている方を積極的に採用したり,ホームページでも外国人材に向けて採用に関する熱いメッセージを発信されています。そこには,外国人材への高い期待が込められているように感じましたので,その部分についてまずはお話をお伺いできますか?
- 葭本様:
- ひとつは,日本人社員と区別していないという部分がありますね。外国人材だから,責任ある仕事を任せないとか成果をあげているのに社内で良いポジションに就けないということは絶対にないですね。日本人と同じように,企業を成長させる人材として大きな期待をしています。
- 若松:
- 外国人材のあるスタイルとして,次々に転職を繰り返しながらキャリアを積んでいくというのがありますよね。日本の企業は,そのスタイルを敬遠して,なかなか日本人と同様に扱うのが難しいとよく聞きます。その中で,期待をかけられるようになった理由は何なのですか?
- 葭本様:
- 海外での出店を手掛ける中で,色々な外国人材と出会って気付いたのが,長く勤めるかどうかに国籍は関係がないということなんです。つぶさにその人の趣向やキャリアアップの捉え方を見ていくと,国籍で一括りにできない個人の思いが見えてきます。そこから,この仕事に情熱を注いだり,没頭したり,何かしらのやり甲斐を見つけると,日本人であろうが外国人であろうが,長く勤め続ける。それがわかってからは,特に日本人と同じように“一体感”を大切に接していこうと思うようになりましたね。
- 若松:
- 御社で最年少役員に就任されたのがシンガポールの外国人材だったというエピソードは,その思いを実によく象徴していると思います。では,外国人材だからこそ,特別に期待しているという部分はあまり無いのですか?
- 葭本様:
- 当然の部分として,日本ではインバウンド需要が増加していますのでその部分をフォローアップしてくれるという期待があります。また,海外出店の場合には,その国の国民性や同業他社については日本人より詳しく調査できる部分が大いにあると思うので,そこには期待をしています。実際,その最年少役員に就任した外国人材は,驚くほどその期待に応えてくれましたよ。自らのネットワークを活用しながら,現地の情報を収集したり独自のチカラで次々と良い出店場所を獲得してくる。逆に,私たちがそのペースに追いつかないほど,活躍してくれています(笑)。
- 若松:
- 外国人ならではのスキルにも大きな期待をされている訳ですね。
- 葭本様:
- その通りです。私たちは,海外展開を大きな目標としています。だからこそ,必然的に海外展開の原動力となる外国人材は,弊社にとっても大切な人材になるのです。別の言い方をすると,企業を支える幹部社員になってほしいという思いを持っています。
明確なビジョンを描く人材が,
未来を切り拓く
- 若松:
- 最年少役員に就任した外国人材も含めて,どのような部分を基準にして採用をされているのですか?なかなか,企業の中核を担う人材を見極めるのは大変だと思うので,ぜひお聞きしたいですね。
- 葭本様:
- 面接では必ず,「20年後のビジョンについて教えてください」と質問するようにしています。自分の将来について観念的ではなくどれだけ具体的にイメージできているかをチェックしています。例えば,弊社の中でこんな挑戦をしてみたいとか,独立して自分のお店を持ちたいなど,そうしたビジョンを描いている人の方が突き進むチカラを持っていると思うんです。
- 若松:
- それが,御社の中で着実にキャリアアップを重ねたり,自らの未来を切り拓く人材となるのですね。実際,その思いを持って入社された方は,仕事に対しても意欲的に取り組むとか感性が鋭いなど,なにか特徴はありますか?
- 葭本様:
- さっきお話した最年少役員のように意欲的であることはもちろん,もうひとつは視野の広さがありますね。特に,独立して自身でビジネスを展開することを描いている人は,経営者視点を持っているように思います。例えば,店舗の決算書や予算など,マネージメントに関する業務についても積極的に学ぼうという姿勢が見えます。
- 若松:
- それは,すばらしいですね。御社としてはそういう姿勢を歓迎して,積極的に学ぶ機会を作っておられるのですか?
- 葭本様:
- そうですね。独立をするか否かを問わず,経営者の視点に立って物事を考えられる社員がいることは組織にとって大きなプラスになります。目の前の業務だけではなく,色々な物事に関心を持って吸収したいというそのチカラを引き立てながら活躍する人材になってほしいと思っていますね。
- 若松:
- 確かに,その視点を持つことで,社会のニーズにも目を向けるようになり,自分自身にどんな能力が備えればいいかなど,自らで考えて行動するようになりますからね。そうした野心あふれる人材が集まってくるのは,なにが評価されているからだと思いますか?
- 葭本様:
- 一番は,成長率ではないでしょうか。ここ数年のうちに,急成長しながら世界各地に出店も行っています。他の企業と比べた時に,そこは評価していただいているように思いますね。
- 若松:
- なるほど。ということは,それだけ多くの人材を採用しなければいけない状況にもなっているのですね?
- 葭本様:
- はい。毎年,60人ほどの人材を採用しています。その中で,1~2割が外国人材。ホームページをはじめ,SNSや既存のリクルートサイトなどを活用して,多くの人材を採用するようにしています。
外国人材のスキルを高める
“現地化”の重要性
- 若松:
- それだけ多くの人材を採用すると,教育に関する重要度も高まってきますよね。多種多様な人材を,ひとつの目標に向かって率いていくのは簡単なことではないように思うのですが。そのあたりは,なにを大切にして取り組みをされているのですか?
- 葭本様:
- 外国人材に限って言うと,再三お伝えしている通り日本人と同様に教育するようにしています。もちろん,国籍が違えば,色々な違いがあってそれを尊重することは忘れません。とはいえ,日本の企業で働く上では,言語の問題や企業マナー,サービスの質に関する部分については,日本人と同じく教育を行っています。現場での取り組みだけではなく,定期的に本社に集まってもらいそれらの講習を行うこともあります。
- 若松:
- 一定の違いを認めた上で,日本人同様に教育を行うというのがすばらしいと思います。その教育をうまく機能させるためには,日本人社員の方に対する教育にも配慮が必要ではないですか?
- 葭本様:
- まさにそこが重要だと思っていまして,日本人社員の認識を教育する難しさがありました。どうしても,現場の日本人にとっては,どこまで踏み込んで良いのかと躊躇してしまう。すると,いつまでたっても外国人材に教育の成果がでないのです。
- 若松:
- なるほど。色々な企業でよくあるケースですが,外国人材が相手となると,身構えてしまうんですね。すると,伝えるべきことを伝えられず,一向に教育が進まないと。
- 葭本様:
- そうなんです。ただ,互いを尊重する気持ちを持って,相手のことを理解しようと懸命な姿勢で教育すれば,国籍を問わず良い関係を作れると思うんです。それは,日本人であろうが外国人であろうが同じです。だからまずは,相手を尊重しようと。その上で,相手の成長を期待してしっかり教育をしようと伝えていますね。
- 若松:
- 違う言い方をすると,日本人的な考え一辺倒ではなくて,ちゃんと外国人材にとって譲れない部分を理解して良い部分を取り入れた教育を行うようなイメージでしょうか。
- 葭本様:
- そうですね。海外に出店している店舗の例が顕著なのですが,出店先の国に根付く良いエッセンスを取り入れるとうまくいくことが多いんですよ。海外店舗の場合,私たちはそれを“現地化”と呼んでいます。
- 若松:
- “現地化”というのは,その国の中に溶け込むような?
- 葭本様:
- ひとつの例から紹介しますと,ある国に出店している同業他社は教育にしろ,業績にしろ,とても良い成果を出されているんです。変な言い方ですが,日本では知名度が低いにも関わらず海外では存在感が強い。その理由を探っていくと,その店のオーナーの方が現地で陣頭指揮をとって,教育やマネージメントに関わっているのです。要するに,オーナーが発信する価値観や目標を日本人と外国人材を含めたスタッフ全員で共有しようとされているのだと思うんです。
- 若松:
- 現地の風土や価値観などを取り入れた店舗をつくり,国籍を問わないサービス価値を提供すると。そこまで教育にチカラを注がなければ外国人材のスキルを十分に活かしきれないということなのですね。
- 葭本様:
- そう思います。その考えは,日本の店舗で働く外国人材についても同じはずです。日本の店舗だから日本人が考えたホスピタリティだけで押し切るのではなく,そこに外国人材が考えたエッセンスを少しプラスする。その内容をスタッフ全員で共有し,理解した上で,サービスを提供すれば,日本人のお客様だけではなく,どの国籍のお客様が来られても満足いく価値を築けると思うんですよ。そうした,外国人材のスキルを高める教育をいかにして上手に進めていくかというのが,今後の私たちの使命のような気がします。
より多くの外国人材が
企業の成長を躍進させる
- 葭本様:
- そうした日本人同様の“一体感”を大切にした教育や,外国人材との価値観の共有を推し進める中で,どんどん外国人材の採用を増やしています。第一綜合事務所さんと出会ってから,その戦略が加速した印象です。
- 若松:
- ありがとうございます。具体的に,どんなところに変化があったのかをお聞かせいただけますか?
- 葭本様:
- シンプルな部分で言うと,第一綜合事務所さんは対応力の幅広さがあるので,一度に複数の外国人材をまとめて採用できるようになりました。同時並行で,いくつものプロジェクトを進められる状況を培えたのでその部分はとても助かっています。
- 若松:
- 確かに1名ずつ進める時に比べると,圧倒的に効率は高まりますよね。とはいえ,御社が効率優先で外国人材のことを大切に考えていないのかと言えば,まったくそうではありません。最初の話に戻りますが,重要な人材として捉えているということもあって,採用をゴールにしていませんよね?その先のキャリアプランを見据えて人材を選んでおられます。それは,他の企業様と比べても優れているポイントだと思っています。
- 葭本様:
- そう言っていただけると本当に嬉しいです。おっしゃる通りで,入社したあとにちゃんと活躍してほしいという思いがあります。だからこそ,人手不足を理由にとりあえず入社できる人を青田買いしようとは思っていません。
- 若松:
- どの企業様でもその思いは同じだと思うんです。ただ,入社後の教育に関するフォーメーションの構築を日々の業務と平行しながら進めるのはとても困難です。ご存知の通り,特定技能の人材を一人採用しようと思うと,100枚以上の書類を準備してもらう必要があります。その中で,御社はそうした準備はもちろん,入社前の体制づくりにおいても難なく対応されています。それだけ外国人材に対する熱い思いを感じますね。
- 葭本様:
- そうした強い思いはあるのですが,私たちと同じ目標を持って歩んでもらえる外国人材がどこにいるのか,その人材を探す方法論は模索中です。若松さんから見て,今後はどんな採用のアプローチをした方が良いと思われますか?
- 若松:
- 例えば,御社で勤務する留学生アルバイトなどの国内留学生の積極的な活用でしょうか。すでに,御社の企業理念にも触れていますし,ある程度のサービスも提供できる。あとは,語学力と研修を綿密に行えば即戦力となるような気がします。日本語能力が高い留学生の活躍する場は明らかに広がっていますね。
- 葭本様:
- 確かに,言語の部分だけクリアになれば,仕事にもスムーズに取り組めると思うので国内の留学生からも採用を進めていきたいですね。あと,国についてはどうでしょう?私たちは,国籍を問わず採用を広く進めているのですが。
- 若松:
- どこが良いということはないですが,しいて言えばミャンマーには個人的に注目しています。日本語と文法が似ているので言語の習得も早いですし,国自体がこれから発展を遂げようという状態なので働く意欲についても申し分ないでしょう。
- 葭本様:
- 言葉を覚えるのが早いというのは魅力的です。社内はもちろんですが,お客様と接する業態である以上,その部分で間違いがあったりお客様にストレスを感じさせない教育が最重要ですからね。ミャンマーは,マーケット的にも成長しているので弊社が大きく成長する基点になるかもしれません。
- 若松:
- 色々な国が急成長しながら,外国人材のスキルも日々,変化しています。そうした情報を逐一,共有させていただきながら,御社の浮上躍進のきっかけになれば幸いです。今回は,色々なお話をお聞かせいただき,ありがとうございました。
- 葭本様:
- こちらこそありがとうございました。今後も第一綜合事務所さんの力強いサポートを受けながら,より良い数多くの外国人材と出会い,弊社を成長させる原動力になり,世界を舞台に活躍する人材が次々と輩出できる,そんな企業になっていきたいと思います。その理想を実現するためにも,今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
(取材・文 橋本未来 / 撮影 吉村竜也 取材日:2020年2月26日)