行政書士法人第一綜合事務所

新型コロナウイルスが配偶者ビザに与える影響

2019年12月に発生した新型コロナウイルス。
それ以降,私たちの日常は大きな変化を余儀なくされてきました。
また,感染拡大を防止する観点から,出入国については水際対策の強化措置が取られています。
国際業務を専門としている私たちのもとには,
“結婚手続きが進まない”
“彼氏や彼女と会えない”
“家族が離れ離れになっている”
“配偶者ビザで入国できるか不安”
など,これまでに経験したことのない悲痛なご相談が寄せられています。
本ページでは,「新型コロナウイルスが配偶者ビザに与える影響」について,様々な観点から解説していきます。

1.2021年8月11日現在の水際対策

配偶者ビザを保有していれば,日本に新規入国できるのか。
これから配偶者ビザを目指す方にとって,この点が最大の関心事ではないでしょうか。

現在は,日本上陸前14日以内に上陸拒否対象の159の国・地域に滞在歴のある外国人については,原則上陸拒否とする運用です。
しかし,「特段の事情あり」として,例外的に入国することが可能なケースもございます。

では,どのようなケースで「特段の事情あり」として扱われるのでしょうか。
ここからは,「特段の事情あり」として扱われる類型についてご紹介します。

①再入国許可(みなし再入国許可を含む。)による再入国
ただし,一部の国からの入国については例外があります。
②日本人・永住者の配偶者又は子の新規入国
③定住者の配偶者又は子で,日本に家族が滞在しており,家族が分離された状態にあるもの
④「教育」又は「教授」の在留資格を取得する者で,所属又は所属予定の教育機関に欠員が生じており,その補充がないと当該教育機関の教育活動の実施が困難となるなどの事情を解消するために入国の必要があるもの
⑤「医療」の在留資格を取得する者で,医療体制の充実・強化に資するもの
⑥「外交」又は「公用」の在留資格を有する又は取得する者
⑦入国目的に公益性が認められる者
⑧その他人道上の配慮の必要性がある場合

新規入国という点で見ると,
②に記載のとおり,日本人の配偶者,永住者の配偶者,またはそのお子様については,新規入国は可能です。
また,③に記載のとおり,定住者の配偶者やそのお子様については,条件付きではありますが,入国できる可能性はあります。

つまり,配偶者ビザ保有者は日本に入国することが可能です。

他方,観光を目的とする短期滞在ビザや就労ビザについては,現在の水際対策によって,入国することはできません。

もっとも,親族訪問を目的とする短期滞在ビザについては,一部の国で入国の実績があります。
この点については個別の判断になりますので,ご希望の際はご相談ください。

2.コロナ禍でも配偶者ビザで入国できる?

上記で見たとおり,配偶者ビザ(日本人の配偶者や永住者の配偶者等)については,特段の事情があるとして,日本への新規入国は可能です。

本チャプターでは,それらを前提に配偶者ビザでの入国手順を見ていきます。

①コロナ禍の結婚手続き

配偶者ビザを取得するためには,法的に有効な婚姻の成立が必要です。
しかし,新型コロナウイルスの影響によって,
・本国での書類が取得できない
・一方の国でしか婚姻を成立できない
・日本に来ることも相手国へ行くこともできない
など,様々なイレギュラーが想定されます。

この点,整理をすると,
新型コロナウイルスの影響による場合であったとしても,日本での婚姻手続きが執れない場合には,例外なく配偶者ビザを取得することは困難です。
つまり,「将来結婚をするので配偶者ビザをください」という申請は許可されないということです。
仮に,必要書類の収集ができないような場合には,残念ながら当該書面を取得できるまで,お待ちいただくしかありません。

次に,日本のみで婚姻が成立している場合について記載します。
国際結婚については,原則両国での婚姻履行によって成立と考えます。
しかし,この点については,例外があります。

令和2年10月12日付,出入国在留管理庁参事官からの書面が参考になりますので,一部抜粋したものをご紹介します。

日本の戸籍謄本を含む提出資料等により,法律上の婚姻関係が成立していること及び当該婚姻が実体を伴うものであることが立証された場合には,同在留資格の許可対象になり得る。

本件のように,一方の国のみでしか婚姻が成立していない場合には,配偶者ビザの局面では消極的な事情として判断されることは前提となるものの,日本での婚姻,婚姻実体がそれぞれ立証された場合には,配偶者ビザの許可対象となる可能性があることに言及しています。

実際,日本の婚姻は成立したものの,相手国での婚姻が未履行のケースについて,当社のご支援案件でも多数の許可事例がございます。
誤解の無いように付け加えると,これはあくまでも新型コロナウイルスの影響によって,相手国での婚姻ができないケースを想定しています。

配偶者ビザを取得するためには,両国での婚姻を成立させるという原則について,変更されたものではありませんので誤解の無いようにしてください。

②コロナ禍の配偶者ビザ申請

新型コロナウイルスの影響によって,“会えないカップル”が増加しています。
配偶者ビザについては,交際から結婚に至るまで実体が重視されるところ,コロナ禍で会えないという事情は,考慮してもらえるのでしょうか。
また,海外在住の日本人が,外国人配偶者と共に帰国したいというご相談も多くございます。
このような場合には,何か優遇措置などが設けられているのでしょうか。

この点について,特に入管からの書面等は公表されていません。

したがって,従来の審査基準をもって審査されるということです。
もっとも,新型コロナウイルスの影響によって,交流ができないケースは増えています。
このような場合の考え方について,私共の事務所での経験をもとに記載を致します。

・オンライン(アプリやインターネット等)で知り合い1度も会っていない場合

毎日のように電話,ビデオ通話などで連絡を取り合っていても,1度も会っていないケースでは,配偶者ビザの許可を取得するのは困難でしょう。
なぜなら,入管は交際の実体を判断する際,社会通念という基準で審査します。
1度も会わずに婚姻することが社会通念と言えない以上,配偶者ビザを取得するのは困難です。

・コロナ禍で1年以上会えていない場合

実際に当社へご依頼のお客様の中にも,多くの方が会えない状況に苦しんでおられます。
新型コロナウイルスの影響によって“会えないカップル”となっている場合には,これまでの経緯をしっかり立証することで,配偶者ビザが取得できる可能性はあります。

配偶者ビザをご検討中の方は,会えない期間が長期化する前に,早めにご相談ください。

・海外在住の日本人が外国人配偶者と帰国する場合

ご相談の多い類型です。
これまで海外に在住していたけれど,新型コロナウイルスを理由として職を失った方,また日本にいるご両親に会えなくて困っている方,また滞在国での医療体制等にご不安がある方など,様々な理由で帰国を望まれる日本人が増加しています。
海外在住者の配偶者ビザ申請について,通常よりも検討事項が増える傾向にあります。
本項目については,配偶者ビザを海外在住夫婦が取得するための6つのポイント に詳細を記載していますので,ぜひご覧ください。

③コロナ禍の査証申請

ここからは入管から配偶者ビザの在留資格認定証明書を受けた後のお話です。

配偶者ビザの在留資格認定証明書を受領した後は,滞在先の国・地域の日本大使館,総領事館,領事事務所等(以下「在外公館」といいます。)で査証の交付を受ける必要があります。

しかし,在外公館の査証の発給は,査証申請先の新型コロナウイルスの感染状況によって,その取扱いが大きく異なります。

問題なく査証申請を受付している国がある一方で,査証申請の受付を停止している国もございます。

そのため,査証申請する先の在外公館のホームページで事前に情報を入手するようにしてください。

なお,査証申請ができない場合があることを考慮し,通常3ヶ月としている在留資格認定証明書の有効期間について,入管は下記のみなし措置を公表しています。

①2020年1月1日から2021年7月31日までに作成された在留資格認定証明書については,2022年1月31日まで有効とみなす
②2021年8月1日から2022年1月31日までに作成された在留資格認定証明書については,作成日から「6か月間」有効とみなす

比較として,「在留資格認定証明書」ではなく,「査証」の有効期間(発行から3ヶ月)が経過している場合についてもご説明します。
査証の有効期間が経過している場合には,日本へ入国することができず,在外公館において,査証申請を再度おこなう必要があります。

なぜなら,入管法7条1項1号において,
「その所持する旅券及び査証を必要とする場合には,これに与えられた査証が有効であること。」が上陸許可の要件と規定されていることから,査証の有効期間が経過している場合については,査証の有効性の要件を満たさないからです。

④コロナ禍での入国で注意すべきこと

コロナ禍においては,入国方法が通常とは異なっています。
下記の措置は,海外から入国する全ての方が対象となります。
そのため,外国人だけではなく,日本人も対象になりますのでご注意ください。

具体的には,

  • 「出国前72時間以内に受けた検査結果の証明書」を検疫所に提示が必要
  • 検疫所が確保する宿泊施設での待機・誓約書の提出
  • スマートフォンの携行、必要なアプリの登録・利用
  • 質問票の提出

が必要となります。

上記フォーマットについては,厚生労働省のHP(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00209.html)から入手することが可能です。

3.新型コロナウイルスが配偶者ビザに与える影響のまとめ

日本のみならず,世界を震撼させ続ける新型コロナウイルス。
新型コロナウイルスは,出入国管理行政にも大きな影響を及ぼしています。

配偶者ビザについては,「特段の事情」が認められ,今は日本への入国は叶っています。
しかし,“未来について”も入国できる保証はありません。
不安を煽るわけではありませんが,今後の新型コロナウイルスの状況次第では,更に水際対策が強化される可能性も否定はできません。

このように,現在の出入国管理行政は非常に不安定です。
日本での配偶者ビザを希望される方は,早期にお手続きを進められることを強くお勧めいたします。

私共は,新型コロナウイルスの影響から,離れ離れになる家族,カップルを数多く見てまいりました。
ご希望を叶えられない無力さを時に感じる一方,正確な情報をお伝えすることで,正しい選択をしていただけることも実感しています。

配偶者ビザでご不安,ご不明がございましたら,お気軽に当社までお問い合わせください。

一日も早い新型コロナウイルスの終息を願い,本記事がお困りの方へ届けば望外の喜びです。