行政書士法人第一綜合事務所

【解決事例】定住者ビザ(連れ子のビザ)の要件

【事例】
中国人のAさん(女性)は,日本人Bさんと結婚し,日本で一緒に生活するために日本人の配偶者等のビザを申請することになりました。
Aさんには前婚の中国人夫との間に5歳になる連れ子Cくんが1人います。離婚後はAさん一人でCくんを育ててきましたし,Bさんとも良好な関係を築いていますので,Cくんも一緒に連れて来日したいと考えています。
Cくんを一緒に連れてくることができるのか気になり,Aさん夫婦は行政書士に相談することになりました。

再婚者が配偶者ビザなどで来日する際に,連れ子を連れてくることができないか,という相談は数多く寄せられています。扶養者,監護者の来日に伴いお子様を連れていらっしゃりたいというご希望はもっともです。
Cくんのような連れ子には、定住者ビザが付与されます。
このページでは,定住者ビザ(連れ子のビザ)の要件についてみていきましょう。

1.連れ子のビザが該当する定住者ビザとは?

定住者の在留資格は他のどの在留資格にも該当しないものの,わが国において相当期間の在留を認める特別な事情があると法務大臣が判断したものを受け入れるために設けられています。
入管法別表第2の「定住者」の項の下欄には,本邦において有する身分又は地位について,「法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者」と定めています。

法務大臣が「定住者」の在留資格に該当する地位を指定する方法には,法務大臣告示(定住者告示ともいわれます。)に類型化されているものと,個々の活動の内容を判断して認めるものがあります。

入管法第7条第1項2号の規定により,入国審査官が上陸の許可に際して「定住者」の在留資格を決定できるのは,法務大臣が定住者告示をもってあらかじめ定めている地位を有する者として活動を行おうとする外国人に限られています。したがって,定住者の在留資格で上陸しようとする場合には,かならず法務大臣の告示に定められた類型に該当する必要があります。

2.定住者ビザのカテゴリー

定住者ビザには告示定住(定住者告示をもってあらかじめ定める地位を有する者としての活動)と告示外定住(定住者告示をもって定める地位を有するものとしての活動にはあたらないが,「定住者」の在留資格が認められるもの)があります。
告示定住は,1号から8号まで規定されており,在留資格認定証明書交付申請の対象になります(末尾の告示を参照ください)。

告示外定住の例としては,以下のものがあります。
①認定難民
②日本人,永住者又は特別永住者である配偶者と離婚後引き続き日本に在留を希望する者(④を除く)
③日本人,永住者又は特別永住者である配偶者が死亡した後,引き続き日本に在留を希望する者(④を除く)
④日本人の実子を監護・養育する者
⑤日本人,永住者又は特別永住者である配偶者との婚姻が事実上破綻し,引き続き日本に在留を希望する者
⑥特別養子の離縁により日本人の配偶者等の在留資格該当性がなくなった者(申請人が未成年等のため実親による扶養又は監護が必要となる場合で,扶養又は監護する実親が海外に在住する時を除く。)で,生計を営むに足りる資産又は技能を有する者
⑦難民の認定をしない処分の後,特別な事情を考慮して特定活動の在留資格により,一年の在留期間の決定を受けたもので,定住者への在留資格変更許可申請を行った者
⑧両親がすでに帰国した又は行方不明の未成年子や児童虐待被害を受けた未成年子
⑨かつて告示定住としての定住者の在留資格を有していた者
⑩就労系の在留資格により継続して10年程度以上滞在している者
⑪出国中に再入国許可期限を徒過した永住者
⑫家族滞在又は公用の在留資格で小学校3年生程度以降の日本の義務教育を修了し,日本の高校を卒業する者
などです。

3.連れ子の定住者ビザも永住許可申請の対象になる?

連れ子の定住者ビザをお持ちの方も,永住許可申請を行うことはできます。

定住者ビザの場合,10年以上の継続在留の例外として,定住者の在留資格を付与された後引き続き5年以上日本に在留していれば在留要件を満たします。
このように,定住者ビザの方については,就労ビザよりも短い在留期間で永住許可申請を行うことが可能です。

なお,所得や納税,公的義務の履行を立証する提出資料については,2019年7月1日より,就労ビザと同様に拡充されています。

4.定住者ビザ(連れ子のビザ)の事例検討

Aさんは日本人の配偶者であり,日本人の配偶者等の在留資格を有しています。
CくんはAさんの扶養を受けて生活する未成年で未婚の実子として,定住者告示6号ニに該当します。申請書にAさんとの親子関係を証明する資料を添付し,世帯の経済基盤についての説明を加えて申請を行いました。

無事に在留資格認定証明書が交付され,Bさん世帯は親子3人で日本での生活を始めることができました。

5.定住者ビザ(連れ子のビザ)のまとめ

定住者ビザにはさまざまな類型があり,また定住者告示の規定も非常に複雑です。理解しにくい規定ぶりとなっている一方で,親族関係や,来日後の活動内容に応じて在留資格が認められる余地が残されています。また,定住者ビザは身分系のビザであるため,就労内容に制限もありません。

したがって,専門家に相談することで,個々の事情をこまやかに立証することが可能となり,ケースによっては在留資格を認めてもらえる可能性は十分にあります。

 

(参考)

〇出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第二の定住者の項の下欄に掲げる地位を定める件(平成2年法務省告示第132号)

出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「法」という。)第七条第一項第二号の規定に基づき,同法別表第二の定住者の項の下欄に掲げる地位であらかじめ定めるものは,次のとおりとする。

一 タイ国内において一時的に庇(ひ)護されているミャンマー難民であって,国際連合難民高等弁務官事務所が国際的な保護の必要な者と認め,我が国に対してその保護を推薦するもののうち,次のいずれかに該当するものに係るもの

イ 日本社会への適応能力がある者であって,生活を営むに足りる職に就くことが見込まれるもの及びその配偶者又は子

ロ この号(イに係るものに限る。)に掲げる地位を有する者として上陸の許可を受けて上陸しその後引き続き本邦に在留する者の親族であって,親族間での相互扶助が可能であるもの

二 マレーシア国内に一時滞在しているミャンマー難民であって,国際連合難民高等弁務官事務所が国際的な保護の必要な者と認め,我が国に対してその保護を推薦するもののうち,前号イに該当するものに係るもの

三 日本人の子として出生した者の実子(前二号又は第八号に該当する者を除く。)であって素行が善良であるものに係るもの

四 日本人の子として出生した者でかつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるものの実子の実子(前三号又は第八号に該当する者を除く。)であって素行が善良であるものに係るもの

五 次のいずれかに該当する者(第一号から前号まで又は第八号に該当する者を除く。)に係るもの

イ 日本人の配偶者等の在留資格をもって在留する者で日本人の子として出生したものの配偶者

ロ 一年以上の在留期間を指定されている定住者の在留資格をもって在留する者(第三号又は前号に掲げる地位を有する者として上陸の許可,在留資格の変更の許可又は在留資格の取得の許可を受けた者及びこの号に該当する者として上陸の許可を受けた者で当該在留期間中に離婚をしたものを除く。)の配偶者

ハ 第三号又は前号に掲げる地位を有する者として上陸の許可,在留資格の変更の許可又は在留資格の取得の許可を受けた者で一年以上の在留期間を指定されている定住者の在留資格をもって在留するもの(この号に該当する者として上陸の許可を受けた者で当該在留期間中に離婚をしたものを除く。)の配偶者であって素行が善良であるもの

六 次のいずれかに該当する者(第一号から第四号まで又は第八号に該当する者を除く。)に係るもの

イ 日本人,永住者の在留資格をもって在留する者又は日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成三年法律第七十一号)に定める特別永住者(以下「特別永住者」という。)の扶養を受けて生活するこれらの者の未成年で未婚の実子

ロ 一年以上の在留期間を指定されている定住者の在留資格をもって在留する者(第三号,第四号又は前号ハに掲げる地位を有する者として上陸の許可,在留資格の変更の許可又は在留資格の取得の許可を受けた者を除く。)の扶養を受けて生活する当該者の未成年で未婚の実子

ハ 第三号,第四号又は前号ハに掲げる地位を有する者として上陸の許可,在留資格の変更の許可又は在留資格の取得の許可を受けた者で一年以上の在留期間を指定されている定住者の在留資格をもって在留するものの扶養を受けて生活するこれらの者の未成年で未婚の実子であって素行が善良であるもの

ニ 日本人,永住者の在留資格をもって在留する者,特別永住者又は一年以上の在留期間を指定されている定住者の在留資格をもって在留する者の配偶者で日本人の配偶者等又は永住者の配偶者等の在留資格をもって在留するものの扶養を受けて生活するこれらの者の未成年で未婚の実子

七 次のいずれかに該当する者の扶養を受けて生活するこれらの者の六歳未満の養子(第一号から第四号まで,前号又は次号に該当する者を除く。)に係るもの

イ 日本人

ロ 永住者の在留資格をもって在留する者

ハ 一年以上の在留期間を指定されている定住者の在留資格をもって在留する者

ニ 特別永住者

八 次のいずれかに該当する者に係るもの

イ 中国の地域における昭和二十年八月九日以後の混乱等の状況の下で本邦に引き揚げることなく同年九月二日以前から引き続き中国の地域に居住している者であって同日において日本国民として本邦に本籍を有していたもの

ロ 前記イを両親として昭和二十年九月三日以後中国の地域で出生し,引き続き中国の地域に居住している者

ハ 中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律施行規則(平成六年厚生省令第六十三号)第一条第一号若しくは第二号又は第二条第一号若しくは第二号に該当する者

ニ 中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律(平成六年法律第三十号)第二条第一項に規定する中国残留邦人等であって同条第四項に規定する永住帰国により本邦に在留する者(以下「永住帰国中国残留邦人等」という。)と本邦で生活を共にするために本邦に入国する当該永住帰国中国残留邦人等の親族であって次のいずれかに該当するもの

(ⅰ) 配偶者

(ⅱ) 二十歳未満の実子(配偶者のないものに限る。)

(ⅲ) 日常生活又は社会生活に相当程度の障害がある実子(配偶者のないものに限る。)であって当該永住帰国中国残留邦人等又はその配偶者の扶養を受けているもの

(ⅳ) 実子であって当該永住帰国中国残留邦人等(五十五歳以上であるもの又は日常生活若しくは社会生活に相当程度の障害があるものに限る。)の永住帰国後の早期の自立の促進及び生活の安定のために必要な扶養を行うため本邦で生活を共にすることが最も適当である者として当該永住帰国中国残留邦人等から申出のあったもの

(ⅴ) 前記(ⅳ)に規定する者の配偶者

ホ 六歳に達する前から引き続き前記イからハまでのいずれかに該当する者と同居し(通学その他の理由により一時的にこれらの者と別居する場合を含む。以下同じ。),かつ,これらの者の扶養を受けている,又は六歳に達する前から婚姻若しくは就職するまでの間引き続きこれらの者と同居し,かつ,これらの者の扶養を受けていたこれらの者の養子又は配偶者の婚姻前の子