德永 武道

永住ビザの不許可事例と再申請の方法とは?

永住ビザを自分で申請したものの,残念ながら不許可になってしまったというご相談が当社に多数寄せられます。
不許可の理由は様々ですが,永住ビザの審査が厳しくなっていることが最も大きな要因です。
しかし,万が一永住ビザ申請が不許可となってしまった場合でも,簡単に諦めてしまうのはもったいないです。
なぜなら,永住ビザの不許可理由がきちんとケアーできれば,逆転許可の可能性もあるからです。
本ページでは,永住ビザの不許可事例と再申請の方法についてご説明いたします。

1.永住ビザの取得条件

まずは,永住ビザを取得するための条件をご紹介します。
永住ビザを取得するためには,大きく以下の3つの条件を満たす必要があります。

① 法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること(素行善良要件)
② 日常生活において公共の負担にならず,その有する資産または技能から見て将来において安定した生活が見込まれること(独立生計要件)
③ その者の永住が日本国の利益に合すると認められること(国益適合要件)
ア. 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること
※ この期間のうち,就労資格(技術・人文知識・国際業務ビザなど)または居住資格(配偶者ビザなど)をもって引き続き5年以上在留していることが必要です。
イ. 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと
ウ. 公的義務を履行していること
※ 納税,公的年金及び公的医療保険の納付に加え,入管法に定める届出等の義務を適正に履行していることが求められます。
エ. 現に有している在留資格について,入管法に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
※ 当面の間は,在留期間「3年」を有する場合は,「最長の在留期間をもって在留している」ものとして取り扱われます。
オ. 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと

これらの条件を満たさないことが,そのまま永住ビザが不許可となる原因となります。
以下では,永住ビザの不許可事例について,より具体的にご説明いたします。

2.永住ビザが不許可となる場合

2-1.永住ビザの不許可率

不許可事例を検討する前に,永住ビザの不許可率はどのくらいなのでしょうか。

永住ビザ申請の許可率・不許可率!の記事に詳細がありますのでご覧ください。

こうして見ると,実に2人に1人は永住ビザ申請が不許可となっている計算となります。
これを見て永住ビザ申請は厳しいものという印象を持たれた方もいるかもしれません。

もっとも,不許可と言ってもその理由は様々です。
不許可の事例を知ることで,ご自身の永住ビザ申請や不許可の場合の再申請に役立てることができるはずです。

そこで,以下では実際に永住ビザが不許可になりやすい代表的な例をご紹介します。

2-2.永住ビザの不許可の類型

(1)年収について
永住ビザ申請においては,年収が許可・不許可を分ける大きな要因と言っても過言ではありません。
具体的な年収は入管側が明らかにしているわけではありませんが,実務上永住ビザを取得するために必要な年収の目安はおよそ300万円と言われています。

それでは,入管へ申請する際に,年収の資料は何年分を提出すればよいのでしょうか。
就労ビザや定住者ビザをお持ちの方が永住ビザの申請をする際には,直近5年分の課税証明書の提出が求められています。
また,配偶者ビザをお持ちの方が永住ビザの申請をするにあたっては,直近3年分の課税証明書を提出することが求められています。

仮に,提出すべき課税証明書の前年度において年収が300万円に達していなくても,徐々に年収が上がっていることや勤続年数によって,今後も安定的な生計を維持することが立証できれば,永住許可が得られるケースもあります。
また,申請するご本人の年収が300万円に満たなかったとしても,世帯の年収次第では十分に永住ビザの許可が得られるケースもあります。

(2)扶養家族について
年収に対して扶養家族が多い場合には,永住ビザの不許可要因となります。

その理由は,扶養家族が多い場合には,安定した生計を今後も維持できるのかという点で入管が懸念するためです。

そのため,扶養家族の人数を判断にあっては,扶養の実態,年収から見た扶養家族数の検討が重要です。

(3)海外への出国日数について
海外への出国日数が多い,あるいは出国が頻繁にある場合も不許可となるケースがあります。
1年のうち半分以上を海外で過ごされている方は,日本に生活の拠点がないと判断される可能性が高く,不許可となるリスクが高くなります。

もっとも,仕事の都合で,頻繁にあるいは長期出国せざるを得ないケースもあります。
このように本人の意思によらずにやむを得ず出国するようなケースでは,出国の理由を明らかにし,出国理由が合理的なものであることを説明することで永住ビザの許可への道が開けるケースもあります。

実際に弊社の案件でも,勤務先から出張記録を証明する資料を作成してもらい,永住ビザの許可を取得した事例もあります。

上記の他,出産・育児のために長期間出国するケースも考えられますが,この点は入管からどのように評価されるでしょうか。

この場合,出産・育児のための長期出国は「本人の意思によらず」とは言えないため,出国が長期間に及ぶ場合には,永住ビザの審査において入管からマイナスに評価されることになるため注意が必要です。

(4)年金の未納・滞納について
年金については,日本に住所がある20歳以上の方は,日本人と同様に公的年金に加入しなければなりません。
これは外国人の方であっても同様です。

就労ビザをお持ちの方で,厚生年金に加入している方であれば問題となることは少ないのですが,国民年金の場合は注意が必要です。

2019年7月以前は,年金の支払記録について永住申請の必要書類とはされていませんでした。
しかし,2019年7月1日以降は,必要書類として年金記録に関する書類が求められることになったことから,年金の未納・滞納が原因で不許可となる事例が相次いでいます。

では,年金の未納・滞納があった場合には,どのように対処すべきでしょうか。

未納・滞納がある国民年金保険料は,2年間遡って納付することができます。
したがって,永住ビザ申請をする前に,まずは未納・滞納がある年金を支払う必要があります。

ただ,未納・滞納となっている年金保険料を全て支払ったからといって,直ちに永住ビザ申請をして許可が得られるかというとそうではありません。
未納・滞納がある年金保険料を支払った後も定期的に滞納することなく年金を支払っていることを証明するため,一定期間は納期通りに納付した実績を作ってから永住ビザを申請することをお勧めします。

また,配偶者ビザをお持ちの外国人の方の場合は,配偶者の年金保険料の納付状況も審査対象となります。
そのため,ご自身の年金保険料の支払状況に問題がなくても,配偶者の納付状況にも注意を向けておく必要があります。

永住ビザ申請の際は,年金保険料の未納・滞納状況がないことを事前に確かめてから申請することが重要です。

3. 永住ビザの再申請

3-1.永住ビザの不許可理由を把握

永住ビザ申請が不許可になった場合でも,再申請することは可能です。
一度不許可になったからといって諦める必要はありません。

永住ビザの再申請をするにあたって最も重要なことは,不許可の理由を知ることです。

永住ビザ申請の不許可の理由は,以下の2つの方法で知ることができます。

  • 不許可の場合に入管から送られてくる不許可通知書
  • 永住ビザ申請をした入管へ不許可理由を確認

3-2.永住ビザの再申請における行政書士の役割

上記のとおり,永住ビザが不許可になった場合,最も重要なことは不許可の理由を知ることです。
なぜなら,不許可の理由が把握できなければ,再申請のための戦略を立てることもできないからです。

永住ビザの不許可理由を知る方法は前述の通りですが,実際に申請したご本人が不許可理由を正確に理解することはとても難しいものです。
というのも,不許可通知書には「出入国管理及び難民認定法第22条第2項第2号に適合するとは認められません。」などと記載されているため,一般の方には何のことを言っているのかさっぱりわからないからです。

不許可理由を入管に直接聞きに行くことも可能ですが,不許可理由は基本的に1回しか聞きに行くことができません。
そして,入管担当者が必ずしも詳しく不許可理由を教えてくれるとは限りません。
そのため,入管担当者から不許可理由を説明されたとしても,再申請に向けて何をどのように準備したらよいかは判断がつきにくいのです。

この点,永住ビザを申請したご本人に行政書士が同行し,直接入管担当者から不許可理由を聞くことが認められています。
審査の要点や実務基準を熟知した行政書士が入管担当者とやり取りをすることで,多くの情報を引き出すだけでなく,再申請に向けてのポイントを正確に掴むことが可能になります。
行政書士と一緒に不許可の理由を把握することは,再申請に向けて大きな一歩と言えます。

永住ビザ申請の不許可理由を確認した後は,永住ビザの再申請に向けて準備を進めていきます。

永住ビザ申請は,不許可から再申請まで一定期間を空けなければならないというルールはありません。
また,再申請そのものが入管から不利益に扱われるということもありません。

しかし,不許可理由となった事実が改善しない状態では,何度再申請しても結果は変わりません。
また,不許可となった事実が改善している場合でも,そのことを入管側に立証できなければ,やはり同じ結果となってしまいます。

では,どのようにして永住ビザの再申請をするのが良いのでしょうか。

3-3.永住ビザの再申請の方法

まず,不許可理由を把握したうえで,不許可理由をすぐに改善できない状況であれば,改善できるまで待ってから再申請に臨むことになります。
なぜなら,闇雲に申請しても,不許可理由が改善しない限り永住ビザの許可を得ることはできないからです。

次に,不許可理由が改善できたのであれば,理由書と立証資料を準備して,永住ビザの再申請を行います。
もっとも,一度不許可とされた事実について,その改善を入管に正確に伝えることは簡単なことではありませんが,不許可理由が改善していることを積極的,かつ的確にアピールすることが重要です。

永住ビザの再申請にあたっては,不許可理由の改善とその立証の2点がカギになります。

4.永住ビザの不許可事例と再申請の方法のまとめ

これまで記載してきたように,永住ビザが不許可になってしまった場合でも,簡単に諦める必要はありません。
不許可の理由を知り,不許可理由を改善することで永住許可の再申請が可能になります。

永住ビザ申請が不許可となり,どのように対応したらよいか,永住ビザの再申請の方法でお困りの方は,行政書士法人第一綜合事務所までお気軽にお問い合わせください!

永住ビザの再申請への可能性を一緒に探っていきましょう。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 德永 武道

・日本行政書士会連合会(登録番号第23082840号)
・東京都行政書士会(会員番号第14958号)
千葉県出身。東京オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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